第11話

「澪って小山のこと好きなんやろ」

直後の昼休みである。

「やから、好きな人おるか聞くん嫌やったんや」

たまに絡む女子グループの2人に睨まれた。

もちろん、小山くんに好きな人がいるか聞いてくれ、と依頼した2人である。

「好きちゃうよ」

「嘘や。普通ドア閉めて、開けられたら、もう閉めに行かんやろ」

普通とは、と問いたくなったが、問いても無駄だろう。

というか、ドア閉めて、と私に頼んできたのは、2人のうち、小山くんが別に好きではないが、自分の友達を支援していた方である。

腹が立つ、なんて感情は一切無かった。

ただ、ああ、めんどくさい。仕方がない。


「好きちゃうよ。私、他に好きな人おるし」

「え!そうやったん」

「誰?教えてよ」

なんでだよ。

なんで、私の大切な恋心を、好きな人に聞きたいことも聞かない人に教えないといけないのか。

そんな簡単に、きっと愛情は掴めない。

そんなこと、中学1年生だろうと、安易に想像ができる。

愛情は本来、生きることそのものを、ただ肯定するものだと、私は信じていた。


12年、私を育てている親にすら、「生きてるだけでいいんだよ」って言われたことがないのに。

勉強できることを求められ、スポーツに優れていることを求められ、自分の言うことを聞くように求められる。

それは、間違いなく、親からしてみれば、私のためであるのだろう。それくらい、わかる。

自分が、いかに恵まれているのかも、わかる。

それでも、その先に、きっと、きっと、私の求める未来はない。


しかしながら、中学生の私に、まだ義務教育を受けなければならない私に、逃げ場などない。

だから、どれだけ「都合の良い子」でいても、私は言葉で戦うと決めていた。

何か答えがあるはずだと、どこかに必ずあるはずだと、嫌なことを耐えながらも、深い愛情を持つ優しさとそれを貫き通せる強さを持って生きられる方法を、絶対探してやると決めていた。

それくらいには、芯が元々強かった。

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しゃんとした背筋が好きだった @purpleyukari

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