第10話

数学だった。

小山くんにどうやって、好きな人がいるか聞こうか考えていた。

「澪、ごめん、扉閉めてくれん?寒い」

女子の隣は必ず男子の席だから、男子を一つ挟んで、友達から声をこっそり声をかけられた。

寒いのは仕方がないので、普通に扉を閉めた。

「閉めんなって、あー」

って声が聞こえたような気がした。


「なぁ、扉開けてくれん?」

「なんで、暑いん」

「暑い」

小山くんとその前に座っている男子が話していた。

数学の前は体育で、男子はよく動くし、代謝いいから大変だなぁと呑気に考えていた。

閉めたばかりの扉を、小山くんが開けた。


私はその直後、無言で開けられたばかりの扉を閉めた。なぜ、そんな行動を取ったかわからない。

それを見ていた小山くんが笑いながら、再び扉を開けた。

もちろん、今は、授業中である。

扉の開閉を、隣の男女が仲良さげにやっていると、誰もが思ったのだろう。


「林田さん、寒いなら、服着なさい。暑いのは脱げないけど、寒いのは着れるでしょう」

中学に入って、おそらく初めて先生に注意された。

間違いない。間違いないから何も言わなかった。

ただ、寒いのも暑いのも私ではない。

なんだか、嫌な気持ちになった。

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