第2話 フィエスナー家の歓迎

……うっ」




 太陽の光が刺すように瞼を照らし、僕は目を覚ました。




「あっ、お母さん!目を覚ましたみたい!」




 慌てた声と共に2つの足音が迫ってくる。僕は身を起こし、目をこする。


 そこは見覚えのない風景が広がっていた。




「傷は大丈夫?何処から来たの?名前は?どうしてあんな所に血だらけで倒れて――」




「――そのくらいにしておきなさい、マリル。ごめんなさいね」




 マリルと呼ばれた少女が頬を膨らませる。母親に怒られたことが気に食わなかったのだろう。


 はっきりしない意識の中、僕は必死に記憶の中を探る。




「……名前は……ゼイン・ヴィシュレイト……何処から来たのか、自分が何者なのかはわからない……」




 記憶を整理すると、意識もはっきりしてきた。


 しかし何も思い出せない。身体の痛みからするに、かなりの大怪我だったのだろう。


 戦士だったのか、それとも何者かに襲われたのか。記憶は深い闇の中に沈んでしまっているようだ。




「そっか、ゼインね!私はマリル。よろしくね」




「……ああ。よろしく」




 彼女の髪は太陽のごとく、燃えるように紅い。マリルから香る甘い香りからは、どこか懐かしさを感じた。




「さあ、2人が仲良くなったところでお昼にしましょう!」




 マリルはぱあっっと顔を輝かせ、階段を駆け下りて行った。


 部屋の時計に視線を移すと、針はちょうど正午を指している。


 開いた窓から料理の匂いがするのにも頷ける時刻だ。




「ほらほら、ゼイン君も。温かい料理が冷めないうちに食べなくちゃ」




「僕もいいんですか?」




 おばさんはこくりと首をかしげる。




「もちろんよ。もうゼイン君は家族なんだから」




 家族、か。自分にも家族がいたのだろうか。


 気になるには気になるが考えても意味がない。今は考えないでおこう。


 僕には新しい居場所ができたのだから。

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勇者学園からはじめる最強魔王の蹂躙譚 樂斗 @Raqto

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