第10話



「れ、ノワール、Aが見当たらないですね……。」

「そうだな、シアナ。」

俺はノワール、シイアナはシアナ、アシュラ殿下のことはバレないためにA、と偽名で呼び合う。

都市内をだいぶ探したが、アシュラ殿下が見当たらない。

くそっ、変装までしてきたってのに、なんで……

…………変装?

俺はとあることを閃いた。

「シアナ、ちょっとすまんな。」

「えっ?」

そう言って、俺はシイアナを引き寄せる。

「『魔術・眼(マジック・アイ)』」

『魔術・眼』。系統外・無系統魔法、又の名を、固有魔法。俺の固有魔法、『魔術無効化』を、その名の通り、目に一時的に刻む魔法である。

「えっ? えぅ?」

シイアナが少し色っぽい声を出す。

いわく、この魔法を体に刻まれると、なぜか気持ちがいいんだそうだ。

まぁ、体の中に入ってくる余分な魔力を無くしてくれるんだからそりゃそうか? ………ていうか神様なのに余分な魔力入ってきてるんだな。

「……っ! もし、かして……っ、でも、やり方は考えてくださいっ!」

シイアナも、あっちが隠蔽魔法をかけているかもしれない、と気づいたみたいだ。

でも、なぜか顔を赤くして……っ!

そういうことか……

今、俺はシイアナを抱き寄せ、側から見ればキスをしていると思われかれない距離である。

まぁ、年頃の女子ならそりゃ赤くなるわな……というか俺も恥ずかしいわ。

…話題をそらそうと周りを見渡すが、辺りにはそこまで話題になりそうなものはなかった。

「……あっ…」

シイアナが気まずそうに俺の後ろに隠れる。

「ん? どうしたんだ?」

「……あ、いえ……あの、前に…。」

シイアナからそう言われて、前を向く。

そこには、楽しそうにデートをするキャラメルとジェルド殿下が。

その奥には、Aとどこぞのご令嬢の姿もある。

「………これは、確かに……」

気まずいな。

とりあえず、監視対象を見つけたから尾行でもするか。

その考えを指文字で示すと、俺たちはなるべくキャラメルとジェルド殿下に見つからないようにAの方により、尾行を開始した。





――

―――


「…結局、決定的な証拠は見つからず……ですか。」

「そうだな。」

二人でそんなことを言い合いながら帰り道を歩く。

Aは寮へと帰還し、俺たちはなるべく早く寮へ帰ろうとしていた。

A――アシュラ殿下と俺たちは寮が違うからだ。ちょうど真逆の位置にある。

俺たちは人通りが少なめの通りに差し掛かる。

「レオノール、様、この後、暇だったり、しませんか…?」

そんなシイアナの可愛すぎるおねだりに、俺は抗えず、結局、デートへと移行することになるのであった。


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作者から

この話の中に入れたかったのですが、レオノールがシイアナと婚約した時、シイアナが「さいきょー」とわざわざつけたのは、レオノールが幼少期、いじめられていたシイアナを、「自分は「さいきょー」だから大丈夫だ!」と勇気付けたことがきっかけです。

長文すみませんでした。

これにておまけも含め、完結とさせていただきます。

ありがとうございました!!

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青春と神と婚約と、卒業パーティーと。 おまめあずき @400725AZ

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