【第6話】月詠荘、全員集合!




「──で、地元のお祭りで焼きそば屋台やれってよ」


 


 便利屋“とらまきや”代表・神宮寺虎吉が、朝から渋い顔で依頼書を読み上げた。

 彼のもとに商店街から舞い込んだ急な依頼。それが――“屋台が足りないから、焼きそば屋台担当お願い”というものだった。


 


 「ふむ、これは面白そうですね」


 「祭り!?おれ出る!祭りってだけでテンションMAX!!」


 「……衣装は可愛いエプロンでお願い」


 「祭りって人格変わりそう……」


 「ちょっと待って、キャベツって

どう切るんだっけ」


 「人手が要るなら……うん、やりましょう」


 


 ──その場にいた月詠荘の住人全員が、即答で乗っかってきた。


 


 こうして、祭り前日。

 月詠荘のキッチンはまさかの

「焼きそば試作大会」と化す。


 


◆ ◆ ◆


 


 「ハル、どう?味見して!!」


 「ジナンくん、それカレー粉入ってませんか?」


 「“神風味”ってやつ!」


 「もっと落ち着いて!!」


 


 一方、優と茶蘭は屋台の装飾を担当。

 リボン付きのポップ、SNS映えするメニュー写真、そしてなぜかちょっと豪華なのぼり旗。


 


 「『神焼きそば』って名前でどう?」


 「ふふ……売れそうじゃない?」


 


 クロは無言でキャベツをひたすら刻んでいた。

 そのスピード、包丁さばき、完全にプロ。

虎吉の作業の手が思わず止まる。


 


 「お前、実は前世で屋台やってた?」


 「川で野菜洗ってた、正確には野菜洗われてた

川だけど」


「神様ギャグみたいだな」

 


◆ ◆ ◆


 


 そして、祭り当日。

 地元の広場に、月詠荘メンバー総出で設営した屋台が並んだ。


 


 「いらっしゃいませー!今夜、限定!

神的美味しさの焼きそばです!」


 「ジナンくん、呼び込みはいいけど

語彙がだんだん宗教!」


 


 鉄板ではハルが焼き、優が盛りつけ、茶蘭が撮影と宣伝。

 クロが補助に入り、虎吉が補強や物資管理、ジナンは……気づいたら子どもと踊っていた。


 


 「俺のテンションがアツアツだから、ソースもすぐ焦げるぜぇえええ!!」


 「ジナンくん!そっちは焼かなくていいから

落ち着いてください!!」


 


 忙しさとドタバタの中、

 それでも屋台の前には絶えず人が並んだ。


 


 客A:「このソース、マジで美味い」

 客B:「盛り付けも綺麗でSNS映えする~!」

 客C(小学生):「ジナンのお兄ちゃん、踊りすぎ!!」


 


 そして祭りが終わり、夜。


 


 屋台の後片づけを終えて、

 月詠荘メンバーは屋上に集まっていた。


 


 「……疲れましたね」

 「足が死んでる……でも楽しかったな」

 「お前ら、まさか焼きそばで青春してるとはな……」

 「へへ……なんか、ちゃんと“チーム”だった気がする」

 「またやろうよ、こういうの」


 


 夜風に吹かれて、全員で食べたまかないの“特製塩バター焼きそば”。

 それは、どんなグルメよりも、あたたかくて、しょっぱくて、美味しかった。


 


 「月詠荘って、変な人ばっかだけどさ──

 なんか、こういうとき、家族っぽいよね」


 


 誰が言ったか覚えてないその言葉に、

 全員が、黙って笑った。


 


《To be continued…》

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お前ら、全員宇宙人だ。 鯖ノ やしろ @sabanomiso

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