第2話 可愛くて、良い子。

「お前は可愛いね」

「良い子だね」


そう言われるようになったのはいつなのか、私にもきっと親にも、誰にも分からない。

ただその言葉は確実に、私の脳に噛み付いては可笑しくさせる"呪いの言葉"だ。


幼稚園に入って、初めて同世代の人間と関わるようになった。

その前にも関わっていた者はいたかもしれないが、あまり覚えていない。まあ、幼稚園時代もあまり覚えていないのだが。


幼稚園に入ってからも、私は未だ可愛くないお転婆だったと思う。

幼稚園に入ってからの唯一の記憶は、誰かに背負い投げをされた記憶だ。どういう経緯でされたのかは覚えていない。

ともかく、幼稚園時代も未だ"お転婆"は健在だった。

ではいつから"可愛くて、良い子"になったのだろうと考えたら間違いなく幼稚園時代から始まってはいたのだと思う。


私の記憶には無いが、母が語っていた事だ。

1つ上の兄の母親と共に所謂"ママ友ランチ"をしていた時に私も連れて行っていたらしい。

そして私はそこで、利口に椅子に座り大人1人前のご飯を食べていたのだと言う。


私はそれを聞いて首を傾げた。

頭から血ばかり出していた私が、そんなに大人しく座れるのだろうかと。

だから多分、その頃にはもう『良い子だね』と言われる事が正義であり、自己肯定をしてくれる言葉だと思い込んでいたのだろう。

何度も言うが今の私にとっては正義でも肯定でもなく、ただの呪いの言葉だ。


その呪いが強くなったのは小学生に上がった頃。

私の通った学校は、新設校で綺麗な校舎で成金の親子と守らない教師、陰湿な虐めが蔓延る地獄だった。

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