第25話 新しい一日
ドンドン、ドンドン。
「……ん?」
ドンドン。
「なんだ……?」
ドン。
「はいはい……今起きますよ……う、頭いて」
ドゴォォォォォォン!!
「なんだぁぁぁぁ!?」
朝。
意識がはっきりする前に、俺の家の扉が吹き飛ばされた。
「リョウジ・セタさんのお宅でしょうか!?」
玄関から聞こえたのは、妙に耳触りの良い、凜とした声音だった。
だから、いったいどんなモーニングコールだ。
「先輩、おはようございます!」
「ああ、おはよう……じゃねーよ」
これでうちの玄関扉を破壊したのは何度目だ? 直すのだってタダじゃねーんだぞ?
「いや、もう半ば恒例行事かなと。期待されればわたし、ベストを尽くさないわけにはいきませんから!」
「別に期待してねー!」
そんな破壊的な寝起きイベント期待してねーわ。幼馴染みに布団引っぺがされるぐらいでいいわ。
「いえ、リョウジ先輩の後輩であり、再教育を自ら請け負った身としては、一分一秒も無駄にできないと言いますか! 常に一緒にいたいと言いますか! それがわたしのドゥマイベスッ!」
「…………」
こいつ、結構恥ずかしいことをズケズケ言うのな。
まぁ、自分の都合を通すための、口からでまかせなんだろうけども。
「とにかく行きますよ! 先輩のモットーも、わたしのモットーも、お互いにもっと教えあわないといけないんですから! ぬふふ、モットーだけに、もっとね!」
「さみーよ」
朝一でさみーギャグ言うな。
「ほら、支度に時間をかけては勿体ないですよ! 最速タイムを目指すことに、ベストを尽くしてください! さぁ、ドゥマイベスッ!」
「あんまり急かすな」
「なにを言ってるですか! 急かしますよ、見てください、この晴天を!」
サクラは言うと、破壊された玄関扉を気に掛けることもなく、外から降り注ぐ陽光を全身に浴びながら、深呼吸をした。
「さ、先輩。わたし達二人が目指すべきモットーを、唱和! さん、はいっ!!」
「…………」
いつもなら適当にはぐらかすところ、気持ちの良い陽光の下、満面の笑みを向けられてしまっては――言ってやるしかあるまいよ。
「何事も、適度に……ベストを、だな」
「よくできました!」
先んじて駆け出していく、後輩の背中。どこか子供のような無邪気さに、思わず苦笑がこみ上げてくる。
さぁ――今日も、一日がはじまる。
転生者の皆さん、チート勇者になる前に、派遣勇者はいかがですか? 葵 咲九 @aoi1124
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