潜神迷宮の民間探索者
ケモ耳もふり隊
第1話
潜神迷宮第零層外周部。
其の地に立つ男は大学生程度の年齢に見える。
男は指を天に突き立てて、宣言した。
「――あは、つまんねぇ人生なんて全てゴミ箱に捨ててやったぜ。後はこの迷宮を、完膚なきまでに完全攻略するのみ」
果ても見えぬほど天高く聳え立つ巨塔は、現在世界中の注目を集め続けているこの世で最も異常な
迷宮名称──潜神迷宮。人類到達階層は脅威の9999層。未だ攻略の兆しが見えないこの迷宮に、男──麻咲光都は完全攻略を宣った。
「やっぱ人生可燃ゴミ、燃やしてナンボのもんだろ!」
螺子の飛んだ男は未だ現世とされる零階層と迷宮1階層の境界線を躊躇いなく踏み越えた。
◆
20XX年に、ある研究室で偶然にも世界で初めて魔素が観測された。
観測されることに成功した魔素はあらかじめ何者かによって組み込まれたプログラムを実行し、全世界に迷宮を生み出し続けた。
生み出された迷宮は数知れず。
迷宮からはその手の小説でよくあるような、現在の代替エネルギーとなる魔石を魔物が排出したり現代技術では再現不可能な効能を持った特殊アイテムにより、経済を大きく揺るがし、活性化させる。
同時に、誰一人として挑戦せず放置された迷宮からは溜まりすぎた魔物の一斉解放、いわゆる──迷宮暴走が起こる。
迷宮から直径難易度掛ける2乗kmの範囲内が荒地となるか、全ての魔物が死ぬまで続くそれは国民の暴動にも繋がった。
これらの純然たる事実を理解した各国はこぞって迷宮攻略に力を入れ始める。
――ただ、日本を除いて。
日本の持つ国土に現れた迷宮数はたった一つ。
首都東京を潰して現れたそれは全長を把握することが敵わないものほどの巨塔であり、他国の迷宮と比べて明らかに異様なそれを放置して迷宮暴走を起こすわけにもいかず、日本政府は恐る恐る立ち入った。
時は経ち魔素観測から三十年が経過。
およそ10000日程度の日数が過ぎた現在、世界各地で迷宮攻略の事例が上がっていた。それにより攻略した迷宮からは迷宮暴走が発生しなくなることが判明した。
加えて情報ではいずれの迷宮も大きくて100層から1000層程度のものからなり、迷宮前の立て札にある攻略難度に比例して階層も増えていったとの事。
対して日本の巨塔は未だ攻略されず、人類到達層を更新し続けている。
──9999層。最前線攻略組のパーティに話を聞けば、10000層のボスが強くて倒せない、と言う。
他の迷宮と比べるまでもなく異常であることが理解できるこの状況に、初めは見た目だけだろうとたかを括っていた各国が次第に注目をして、現在では数多の有力な探索者が派遣されるまでに至った。
──尚も攻略できず。
巨塔は、あらゆる迷宮の例外が集まったかのような様子から、中には神さえ潜んでいるのではないか、と噂されて遂には『潜神迷宮』の名が与えられる。
日本でも民間から探索者起用が施工され始めて数年。大学生となった男、麻咲光都は18歳を迎えて迷宮年齢制限がついに解除された。
彼は旧東京都へと辿り着き、迷宮攻略に向かって着々と準備を進めていた。
─────迷宮立札─────
迷宮名称:潜神迷宮
攻略難度[測定不明]
人類到達階層/第9999層
──────────────
潜神迷宮の民間探索者 ケモ耳もふり隊 @rakugaki_tekito
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