第2話 霧島円香にとっての北見一成 1

「可愛い人」


「子供じみた虚言癖を繰り返すどうしようもない人」


「私がいないと生きていけない人なの」


口にする度に、心配されたり呆れられたり、時には離れていってしまった人もいたけれど、彼との話を持ち出すと話題の中心になれる。


特別になれる。


私の大事なアクセラリー。


霧島円香にとっての北見一成は、そういう存在で、残念イケメンとすら評価されない本当に見た目以外の利点が皆無の男との生活は、彼女の自尊心を満たしてくれた。


身長は高いが筋肉がつき辛い体質。


その割に喧嘩っ早い。


その割に気が弱いので軽く叩かれた程度で直ぐに土下座をする有様。


「可愛い人」


彼の語る家族のエピソードは毎回、微妙に変わるが祖父母に育てられた事だけが共通している。


今も存命の彼の父母からは「本当に迷惑を掛けて申し訳ない。」と事あるごとに言ってもらえる。


本当に気持ちいい。


そんな日は来ないと思うけど、私が飽きるまで、ずっとそばにいてね。


もしもそれが叶わないのならば、あの日のあの娘みたいにあなたを殺すから。

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私はあなたに成れず、あなたは私に慣れるのでしょう 棍棒威 @solid-embryo

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