ファミリア!!
君野ハナゲ
第1話
「真田家の皆さんへ
これからこの家族は崩壊します。」
ある秋の晴れた日、少し肌寒い気温に包まれたリビングで、家族一緒に、優雅に朝ごはんを食べていた時のこと。家のポストにこのような手紙が入ってました。
差出人は不明。文字も明朝体で、パソコンか何かで打たれていた為、誰がやった悪戯なのか特定することはできませんでした。
「ええ!なにこれ、」
最初に見つけたのは母でした。
「どうしたそんな大声出して。」
「お父さん、見てよこれ。」
「もう、朝はゆっくりさせてくれー」
イヤイヤながらも父はその手紙を手に取りました。
「こんなのただの悪戯に決まってるじゃないかー笑」
父はあっけらかんとしていました。
「俺にも見せてー!」
「私にも」
姉と弟が、面白いもの見たさにその手紙に群がりました。
私も念のため、その手紙を見ておこうと思いました。
ほんと、なんの変哲もない、ただの白紙に黒い文字が連なっているだけの紙です。
「へえーなんか面白そう!」
弟が言いました。
「ただの悪戯にしか見えないんだけど」
姉は弟と真逆の反応でした。
「まあ確かに悪戯だろうけどさ、面白そうじゃん!」
「そんなに面白がってたら、いつかバチ当たるよ笑笑」
「バチ当たることなんかしたことねーよ笑」
私はその会話を聞きながら苺ジャムの乗ったトーストを貪り、牛乳で流し込んだところで
「それほんとかなー全然信じれないんだけど笑笑」と弟に突っ込んでみました。
「ほんとだってー笑笑」
弟は笑いながらこう答えました。
「え!みんなそんな感じなの!これ、脅迫文みたいなものだよ!!」
この場で唯一、この手紙に脅されているのは家族の中で一番心配性の母でした。
「だってこんな紙切れで、家族が崩壊する訳ないじゃん?」
「詩織姉さんの言う通りだよ。だってこんな仲のいい家族そうそういないぜ?」
「そうだぞ、子供たちの言う通りだ。家族を信じてやらんでどうするんだ。」
「‥‥そうね、、、そうだよね、!
だって、だってこんなに信頼しあってるもんね、!!」
「‥‥‥‥。」
父たちは半ば強制的に母を説得し、母もまた強制的に納得せざるを得ませんでした。
吐き気がしました。
なんとも言えない不快感に。
胸の奥底を、先の尖ったスプーンで全て、何一つ残らず抉るような底知れない不快感、嫌悪感、いや、、それ以上の感情に、ひどく吐き気がしました。
その時の私の顔はひどく笑顔が引き攣っていたに違いありません。それほど、自分にとって隠しきれないほどの感情でした。
ではなぜそんなに不快感を覚えたのか。
それは、私が知ってはいけない、家族の裏の顔を知ってしまったからです。
ファミリア!! 君野ハナゲ @nr_hn00
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