【キャッチボール小説】鏡は冷たく六花を誘う

狂フラフープ

第2球 始まり

※この作品は、おくとりょう様主催の自主企画『第一回キャッチボール小説マラソン大会』参加作です。

閲覧の際は先におくとりょう様の書いた「第1球 始まり」をお読みください。


「第一球 始まり」は以下

https://kakuyomu.jp/works/16817139555266066744/episodes/16817139555527798261


『第一回キャッチボール小説マラソン大会』

https://kakuyomu.jp/user_events/16817139555566238264





「ましろー!何してるの?」


 お母さんの声にハッとして我に返る。外は雪に吸われて音ひとつなく、凍えるような風が玄関から吹き込んでいた。

 床暖房が温める廊下のフローリング。冷たい空気が足元を撫でる。薄暗い廊下の壁にかかった鏡の中で、ぼんやりしている自分を見ながら、私は昨夜の夏景色を思い出していた。

 ……この鏡の先にあった、あるはずのない新緑の世界を。


「……もう。いつまで鏡に見惚れてるの?

 いくら美人に生まれたからって、お母さんを待たせてまで、眺めるのはちょっと違うんじゃなーい?」


 腰に手を当てたお母さんが白い息を立ち上らせて、首を傾げる。着膨れた服の隙間から綺麗な黒髪が僅かに覗く。


「えへへー、ごめーん」


 彼女の髪をそっくりそのまま移し植えたような私の直毛。それをまとめてニット帽に押し込んで、ぐしぐしと靴を履く。扉を開けると冬の寒気が暖かな空気を容赦もなしに攫っていった。


第3球

https://kakuyomu.jp/works/16817139555266066744/episodes/16817139555855825977

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