狂フラフープ 様
第3球 くそ兄貴
(https://kakuyomu.jp/works/16817139555854103666/episodes/16817139555854407783)
突き刺すような日射し。砂埃の煙たいグラウンド。蝉たちがブラスバンドみたいに大合唱する中、軽い音を立てて跳んでいく白い球。
私は運動公園に野球の応援に来ていた。……こんなに暑いのに。……野球なんて、ちっとも興味はないのに。
「みーどりぃーっ!」
聞き覚えのある耳障りな声。振り向けば、くりくりの坊主頭が満面の笑みでこちらに向かって走ってくる。私は帽子のつばをキュっと下げて顔を背けた。
「もーぅっ、無視しないでよぉ~」
このクネクネしている男は私の兄貴で、私がこの炎天下の中、応援に来る羽目になった理由。そして、信じられないことに、所属している高校の野球部では四番ピッチャーをつとめているのである。
「てか、応援に来てくれてありがとねー!
みどりが来てくれるっていうから、シロウ兄ちゃん頑張っちゃったよぉー」
「……キモ」
思わず本音がこぼれ出る。でも、兄貴が大活躍したのは本当で、ルールを詳しく知らない私の目から見ても、快勝だった。暑い中、わざわざ応援に来た甲斐もあるって感じ。だから尚更……。
「もっとシャキッとしてよ、クソ兄貴」
そう言い捨てて、席を立つ。もう試合が終わったのなら、いつまでもお日さまに晒される必要はない。
「お母さんには先に帰ったって言っといて」
ふにゃふにゃしてる兄貴をそのままに、グラウンドをあとにする。
外の道路にはたくさんの車が行き交ってる。ピカピカのボディが太陽を反射して、みんなギラギラしていた。
何だか別世界に来たみたいで、ぐーっと背伸びして、深呼吸した。いつもは嫌いな排気ガスが胸のしこりを洗い流してくれる。……ような気がした。
(https://kakuyomu.jp/works/16817139555854103666/episodes/16817139555936642704)
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