俳句、短歌、漢詩、自由詩、長歌、それに旋頭歌(!)、仏足石歌(!!)、今様(!!!)まで、久里 琳さまが作った多種多様な詩歌とともに、その解説までついてくる、なんとも贅沢な読み物です。
詩歌に暗いので、その世界に足を踏み入れてはいつも心細くなっています。この『詩・歌・句の欠片』では、作者さまの詩歌に加え、込められた思い、表現したい世界、味わってもらいたい点など、キーポイントを解説してくださっています。いわゆる、教科書ガイドみたいな感じで、心強いのです。
詩歌は自分のこころのままに感じたらよいというお説もわからないではないのですが、なんでもOKは初心者に戸惑いを生み出すことも多いです。型やルールの定まった歌・句、それに漢詩を味わうなら、まずそれらを抑えておくことが鑑賞の手がかりになることもあります。それら、おおざっぱな「枠」についても時に触れつつ、あくまでゆるりと楽しもうという語りに勇気づけられます。
読者さまとのコメント欄での会話も、書き手の思いと読み手の解釈という二つの世界がどう重なるのか、その可能性をざっくばらんに示してくれて、わくわくさせられます。
俳句、短歌、自由詩、そして漢詩まで。毎回違ったスタイルで紡がれる詩はどれも筆者の細やかな感性と、詩作に関する豊富な知識があふれています。
季節になぞらえた詩、情景や心境を映し出す詩。少ない文字数で描かれる研ぎ澄まされた詩の数々は、一文字一文字を大事にされているのが伝わり、何度も反芻して読みたい作品ばかりです。
また、それぞれの詩に読み方や解説も添えてあるので、俳句や漢詩に詳しくない人でもより深く理解することができます。詩だけでなく、文章を書く人にはとても勉強になることでしょう。
四季折々の言葉を優しく綴った、センスと知性が光る作品。じっくりとお読みください。