結婚

 リアンは一人立ち尽くしていた。高級カーペットにポツポツと涙が落ちていく。

「おい・・・・・ウソだろ、オリビア。冗談はよしてさっさと出てこいよ? なあ、オリビア。いるんだろ、オリビア、オリビア、オリビア、オリビ・・・・・アァァァァァァァァァ!!!!!!」

 一人、他人の部屋で泣いている自分。

 経った数日前に初めてこの部屋に来て、それで変な設備ばかりあった部屋。それがアンドロイドやら魔法やらに関連するものと分かって。それでそこから小車を捕まえて。社でいろいろあったけど社長と僕でどうにかして行って。

 頑張ってった。愛し合ってた。でも。なのに。

「オリビアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

 叫んでも叫びきれない。


 もうすぐ、オリビアの母親などがこの部屋に来るだろう。

 ――あまりにもうるさすぎるから。

 それでも、やめられない。止まらない。

「どこにいるんだオリビアァァァァァァ・・・・・」

「ここにいるけど」

 ――え? いるの?

 何、ここにいるのか。

「だから、ここにいるじゃん」

「あ」

 すると、いた。

 確かに。大きな設備に。そう、僕が巨大掃除ロッカーモドキと言った者。

 あの中から出てきた。

 ――あれって、アンドロイドの子供を作ってるものじゃあ。

「リアン。私今度こそ人間になったよ。記憶とかいろいろそのまんまで」

「どういうことだよぉ・・・・・まあ、無事で何よりだ・・・・・オリビア」

「泣いてるし。別に、バイバイとか言ったわけでもないし。人間になるって言っただけだし・・・・・」

 オリビアは呆れながら、それでも微笑みながら一人うなずいていた。


 で、結局オリビアによると状況はこうだった。

 人間になるために、最大限の魔法を集めて、その魔法に包まれて消えた・・・・・と見れたが、実は煙の状態で一瞬にして掃除ロッカーモドキに移動したのだ。

 そこから、最大パワーを使って記憶、人格、体型・・・・・様々なところをそのままで、アンドロイドや魔法があるところだけ人間っぽいものに変わっていって。

 それで、用意ができてから掃除ロッカーモドキから出てきたと。


「つまり、魔法を捨てるために魔法を使ったってこと。まあ、おかしな話だけどね」

 そう言って、くすっと笑った。

 ――魔法が無くなっても、君の笑顔は本当に魔法みたいだよ。

「とりあえず、まだまだ私と一緒にいれるってこと。良かったでしょ。まあ、あんなに泣いてくれたの、嬉しかったんだけどね・・・・・」

 ほっぺを少し赤くして、目をウルウルさせる。

 ――だから、こういうところは掃除ロッカーから出て来ても同じなんだよな。

 そして、オリビアは一言だけ言って移動した。

「はあ、人間になったばかりで眠い。魔法も最後の最後までめっちゃ使ったから精神的に疲れてる。寝るわ」

 そのまま、ベッドにダイブして、寝息を立て始めた。

 リアンは、オリビアに毛布をそっと掛けてやった。


 それから、二週間。

 巨大な結婚式場でリアン・L・バーンズと横井オリビアの結婚式が行われた。

「おめでとう、リアン!」

「オリビア、幸せにね!」

 ぼくとオリビアの友達や親せき、そして家族が集まって盛大に祝ってくれている。

「それでは、誓いのキスをしてもらいます」

 うわぁ、来たよ。

 ケーキ入刀の時の練習でも二人とも顔真っ赤だったけど、これはどうすればいいのだろう。

「新郎様、どうぞ」

 リアンは、顔を真っ赤っかにしているオリビアに近づいた。

 顔を真っ赤にしているオリビアは恥ずかしながらも笑っている。

 ――はやく、チューしてよ。

 とでも、言いたいのだろうか。

 ――だから、いつまでも僕の心を話してくれないんだよ、君の仕草。

 リアンは、オリビアの頬に少しだけ唇を付け、その温かい肌を吸った。


(完)

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令嬢との縁談 ~彼女は不思議な秘密を持っていた~ DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555

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