人化

 あれから、東に権力は無くなり、オリビアに対する悪口はだんだんと消えていった。

 ――と、思っていた。

 だが、今度はまた新しい噂が流れていた。

「オリビア様ってロボットじゃないのか?」

 きっかけは、またまた小車だった。

 何を思ったか小車に転ばされたオリビアから電気がバチバチと出てきた。

 バチバチッ、バチバチッと。

 それを見た小車はロボットじゃないのかと考えるようになったということだ。


「ああ、もういや。しばらく休ませて・・・・・」

 オリビアは精神的にも食われて行っていたため、休暇を取ることになった。

 その間に、リアンは奔走することになる。

「ねえねえ、オリビア様がアンドロイド説って聞いたことある?」

「ああ、言ってるよね。オリビア様、この前も魔法がどうちゃら言ってた」

「全く、彼女には変な噂ばっかり流れるねぇ」

 おっとおっと、営業の女性社員がこそこそ話している。

「おい、お前ら。オリビアについてへんなことを話すんじゃない。そうなったら、お前らの位にもよる。何より、そんな噂が広まったら会社自体が不安になるからな。最悪の場合、お前らが路頭に迷うことになるぞ」

 リアンが注意したら、

「すみませんでした、リアン様」と謝るがリアンが去ると、またヒソヒソ話をしている声が聞こえてきた。


 数日後、リアンは社員みんなに伝えた。

 少し、社の不安が落ちていることを。

 各部の部長を集めた部屋で社長が話し始めた。

「さて、今回みんなに注意するのは他でもない。オリビアについてだ。最近、オリビアについて魔法だのロボットだの宇宙人だの噂が流れているがこれはどういうことかね」

 社長が切り出すと、小車が反論した。

「オリビア様に一度締められたことがあるからです。そう、不思議な力で。そして、何やらオリビア様から電気がバチバチ出ているのを見たこともあるのです」

「んなわけあるか!! さっさと証拠を見せやがれ証拠を! 動画ぐらい撮っとくだろ普通はなぁボケェ!!」

 社長がマジギレし始めたわけで、小車は口を閉ざしてしまった。

「次なんか言ったらお前左遷だぞ左遷。いいな」

「・・・・・はい」

 義理の兄に対してこれって、社長も怖い面があるものなのだな。


 その夜、オリビアと話していた。

「オリビア、大丈夫だ。社長が小車とかめっちゃ注意してくれた。もう心配はない。多分」

「多分って・・・・・私、決めた」

「何を?」

「私、人間になる」

 人間に、なる?

「それは、どういうことだ?」

「言葉のまんま。人間になりたい。もう、アンドロイドとか魔法とかそんなことから解放されたい。まあ、多分倒れると思うけど」

 人間になりたいって。

 アンドロイドの感情のうちなのだろうが、すごいぞ。

「で、どうやって人間になるんだ」

「え、こうするの」

 オリビアは歩き始めた。そして、自分の部屋に入ると魔法が溜めてある壺を見つけ、それを――飲んだ。

「いや、お前が出した魔法を飲んでどうなるんだ? しかも、魔法は気体だし・・・・・。おい、大丈夫か・・・・・?」

 そんなこと、オリビアが聞いているはずもなく、飲み続ける。何かの呪文を唱えながら。

「おい、おい、どうなるってんだよ。だいじょ」

 すでに、オリビアは汗をかいている。

 そして、魔法が入った壺をグイっと持ち上げると、飲み干した。

「۞!!!!」

 何やら意味不明な言葉をオリビアは吐いた。

 その瞬間、オリビアの体が紫色の煙に包まれていく。

「「!!!!!!」」

 リアンは驚きの意味で、オリビアは苦しみの意味で何も言えずにいる。

 パッ

 その瞬間、オリビアの体は煙となって・・・・・。

「き、消えた・・・・・?」

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