これまで私のTS概念に影響を与えてきた作品と、TS書きに至る道

 以前X(旧Twitter)のスペース放送で話すのに用意した原稿をちょっとだけ整理したものです。


・ジキル博士はミス・ハイド(1995)

 はっきり言うとクソ映画。アメリカの最低の映画決めるラジー賞とか獲ってる。

 ただ父親がこの映画をテレビの再放送か何かで付けてて、私も夜中に偶然目が覚めちゃって。たぶん8歳とか9歳とかの頃にうっかり観ちゃったのがその後の運命をがらりと変えてしまったという意味では、ある意味私の人生を変えてしまった最大の作品。

 ちなみに大人になるまで映画のタイトルも知らなくて「あの衝撃的な映画」扱いだった。

 簡単にあらすじを話す。

「ジキルとハイド」ってお話はまあみんな結構知ってると思うんだけど、あれを同一人物の性転換でやったらどうなるかっていう話なんだ。

 ジキル博士のひ孫くらいだったか、リチャードって人が主人公なんだけど、ジキル博士の研究ノートに記載されていた薬を興味本位で作ってしまって、試しに自分が実験台になるとかいういきなりとんでもない馬鹿なことをして。

 そしたら薬の作用によって、ハイドという女性に変身してしまうと。面白いのは、この変身が自分の意思でできるわけではなくて、周期的に起こる。変身した後はまったくの別人格で、男の方は変身している間の記憶はない(一方的に女性側だけが覚えている)みたいな感じで。

 この変身したハイドがもう、とにかくえっちでお下劣で。身体使って仕事の上司を誘おうとするとか、まあやりたい放題なんだけども。元の男のリチャードを乗っ取ってしまおうとするんだよね。段々変身の周期も短くなって、女である時間が長くなってくると。

 焦ったリチャードは元に戻る薬を何とか開発して、恋人の協力とかもあって、最後は上手く元に戻れましたっていうような話。

 私はこれ観ちゃってから、まだ性の目覚めとか全然まだなんだけど、だからこの映画のお下劣さすら内容は全然わかっていなくて、ただ変なことしてるんだなって理解しかなかったんだけど。自分が女の子になるとか人格まで変わっちゃうみたいなことにとにかく衝撃を受けてしまって。

 それからはしょっちゅう夢に見るようになってしまったし、変なこともこっそり考えるようになってしまった、という意味でとても罪深い作品。


・らんま1/2(1987)

 これはもう言うまでもなく有名なTS作品の金字塔なんだけども、私が出会ったのは最初に言った深夜映画を見てしまった同時期か、少し後くらいなんだ。

 9歳とかの頃には見てて、漫画自体も小学生のうちに読んでると思う。

 お湯を被ると男に、水を被ると女になるというシンプルな設定で、ラブコメありギャグありバトルありで、今でもTS入門編に相応し作品だと思う。実は可逆TSというのは数が多くないんだけども、それが金字塔と言うのも面白い話で。

 この作品の特筆すべきところは、漫画もそうなんだけど、実はアニメですね。まだアニメ表現がおおらかな時代でして、普通に乳首付きのおっぱいとかが出てくるんですね。らんま自体が結構さばっとした性格なんで、いやらしさはそんなになくて、ほんとおおらかに出てくる。

 TSに性的要素があって、それが何だか興奮するみたいな感覚は、この漫画とかアニメから得たような気がするな。それで、最初の映画にあったイメージにえっちな要素が加わって、もう自分の中でぐちゃぐちゃになってきたのもこの頃。まだ精通もしてないってのに、TSのエリート教育みたいなものを受けている笑

 同一人物がころころ男女が切り替わって、性格の基本も同じなんだけど、ただ身体の違いによってちょっと感じ方が違うという感覚は、後のフェバルに続くことになります。


・ドラゴンボール(1984)

 全然TSではないんだけど、これもなあ……。

 色々と拗らせる要因になったというか。ああいうのさらっと描いちゃダメなんですよね。

 実は初期のドラゴンボールって結構エロいんですね。悟空が気軽に女性の股ぱんぱんしたり、ブルマがパンツ脱いだりとか。ランチさんというキャラがいて、くしゃみすると髪の色と性格が変わっちゃうんですね。この辺りは色々とヒントになりました。

 あとはね。何といってもね。セルとか魔人ブウとかいう奴がいけないんですよ。大戦犯ですね。

 これは中高生くらいになってから知ったのですが、世の中にはセル呑みという特殊な性癖ジャンルがありまして。あのしっぽで18号その他を丸呑みしたり、丸呑みした後で体内でいけないこととかする(セルジュニアはらませたりする)という、大変けしからんジャンルがあるわけなんですが。そうでなくても、原作描写だけでも十分いやらしいんですよね。だからえっちな部分抜きにしても、小学生でも色々考えてしまうんですよ。

 あとはブウの吸収ですね。こっちの方はセルほどメジャーなネタではないというのはありますが。元がピッコロとゴテンクスとか悟飯とか、男キャラの吸収だから、というのはあるんですが、ただこれも妄想はできる余地が山ほどあってですね。

 例えばさっきの18号とか、悟飯のガールフレンドのビーデルさんとか。その他を吸収したらどうなるんだろうみたいなことをね。

 絶対おっぱいとか付くようなあとか、股はどうなるんだろうなみたいなことを、それはもうたくさん考えてしまうんですね。

 ええ。私はまた一つ歪んでしまいました。


・パラサイト・イヴ(1998)

 これもTS作品ではないのですが、紹介させて下さい。小説の方は後に大学生になって読んだんですけど、それも面白かったんだけど、ゲームの話です。

 ゲームと言っても、私自身がやってたわけではなくて。母親がやってたのを後ろから見ていただけなんですが。

 ジャンルとしてはガチでホラーなんですが、そういう意味で怖いから夢に見てしまって、夜寝られなくなったんですが。別の意味でも寝られなくなったものです。

 内容知ってる人いるかな? まず、メリッサという女性がいるんですが、主人公のアヤが彼女のオペラ舞台を見に行くんですね。そこでメリッサが歌っている最中にイヴという存在に意識を乗っ取られてしまうんです。

 そのまま歌を歌うと、どんどん人体が発火していってえらいことになるんですが、主人公のアヤだけは何ともない。アヤはイヴと対決していくことになるわけですね。

 実はイヴの正体はミトコンドリア生物なんですが、歌声などを使って人の体内のミトコンドリアを覚醒させて、発火させたりどろどろに溶かしてしまうんですね。

 彼女の目的は、彼女はメリッサを乗っ取っているだけでヒトの細胞が残っているので、そうではなくて、完全なミトコンドリアだけの生物を作るということで。そんな子供が欲しいと。

 だから、メリッサの身体を使ってボテ腹で孕んだりだの、色々すごいというかやばいことをするんですよ。

 話が進むとどんどん身体が変異していくんですが、最終形態の第五形態の上半身裸の姿とかがね、めっちゃエロいんですよ。化け物なのにエロい。もろおっぱい見えてる。この衝撃的な展開とビジュアルにものすごい影響を受けてしまってですね。

 正直に白状すると、これがフェバル4章の元ネタです。響心声の巫女とかは、かなりまんまなんですね。

 体内にある因子の覚醒によって、人だったものが化け物へと変貌してしまう。それがさらに人をぐちゃぐちゃにして取り込んで、より完全な生命になろうとする。

 ただ、アイは子供とかいう概念はないので、自らをすべてアイにしようとするのですが。

 フェバルの文脈でこれをやるとどうなるんだろうというのが、4章の話のベースとなっています。


 以上が主に小学生時代に触れたもので、次からは中高生時代に触れたものになります。

 私が小学生の一桁年齢のときってまだまともなインターネット環境が家になくて、電話回線とかで時間あたり通信料金が発生するから、気軽に使えなかったし、使わせてもらえなかったんですよ。

 それがブロードバンドの定額制になって、フラッシュ動画とかも気軽に見られるようになったのが、小学校5年生とか6年生とか、その辺りで。

 そこから2ch掲示板だとか、個人サイトだとか、ネットにある文章に触れていくようになるのは、中学生になってからです。

 私はついに足を踏み入れることになります。


・少年少女文庫(00年代)、あむぁいおかし製作所、城弾シアター、真城の城、個人サイトの作品の時代

 2000年代、中学生になってからひたすら読み漁ったのが、この辺りのTSメインサイト、あるいは個人サイトの掲載作品です。

 今となってはタイトルも覚えていない作品が多いので、具体的な作品を多く挙げることはできないのですが、いくつか紹介しましょう。


「教科書には載ってない人生相談」

 今はもう消えてしまって読むことができないのが残念ですが、当時すごくハマっていました。

 どんな話かというと、男子高校生がある日、身体だけ女の子になってしまって。最初はすごく戸惑うんだけど、とりあえず親しい男の先生に頼って、それで優しくしてもらっているうちに段々自分の変化にも慣れてきて。

 心も少しずつ女の子になっていって、最初はあまり気にしないで胸とか平気で見せて事情説明して相談してたのが段々恥ずかしくてできなくなっていって、教師の男が好きになってしまって、みたいな話です。

 繊細な心理描写とちょっとえっちなところもあって、それが大好きだったんですよね。

 いつしか続きが更新されなくなってしまい、待ち続けていたら掲載していたブログサービスの終了によって永遠に見ることができなくなってしまった。

 そんな懐かしくも悲しい思い出です。


「華代ちゃんシリーズ」

 これは昔のTS好きだったら大体知ってると思うシェアワールド作品なんですが、紹介させて下さい。真城さん発祥で、少年少女文庫を中心に流行ったものです。

 華代ちゃんって少女キャラがいるんですが、依頼人の悩みを強引にTS変身によって解決した風味にするというテンプレートで、色々な人の性転換が描かれました。

 中でも変身過程をじっくり描く、いわゆるシークエンスと言われるものなんですが、ここを前面に押し出したことが最大の特徴でして。

 私はここでもう一種のカルチャーショックを受けてしまうんですね。それまでうっすらと妄想では女の子への変身過程みたいなものの意識はあったんですが、それが華代ちゃんシリーズに触れたことでどんどん生々しく、具体的になっていった。

 妄想を豊かに膨らませてくれた、素晴らしい作品たちでした。


「おかしなふたり」

 これも真城さんの作品です。私はもうこれが大好きで大好きで仕方がないです。連載は止まってしまっているんですが、今でも見られます。やったぜ。

 兄と妹の兄妹でお互いを性転換させられる、つまり可逆TSではあるんですが、性別だけでなく服装を好きに変えられるというのが特徴でして。

 特にお兄ちゃんの方があられない恰好をさせられまくるんですよ。イラストもちょくちょく付いていて、それがまた可愛くて。とにかくそそります。おすすめです。


・萌えた体験談コピペ保管庫、お姉さん大好き、妹大好きスレ

 TSじゃないんですが、よくお世話になったので紹介します。

 中高生辺りはとにかくエロの権化でして。別にTS作品じゃなくても、コンビニとか古本屋でこっそりエロ作品を読んだりしてました。その中で、いとことか近親相姦とか、近いものの関係のエロにだいぶ嵌ってしまいまして(姉とか妹がリアルにいなかったので、そういうのが抵抗なく見やすかったというのもあります)。

 その手の文章、名も無き作品たちをひたすら読み漁ったのがこの時期ですね。

 あれですよ。まだラノベとか全然読んでないんですよ。普通の小説だってハリーポッターとかデルトラクエストみたいなのしか読んでないようなそんな時期に、高濃度のエロとTS作品に触れ続けてしまった。

 まさに湯水のようにエロとTSを浴びて生きていた、ということになります。


 以上のような経験を経て、自分の中でどういう世界観が出来上がっていったかというと、もうぐっちゃぐちゃのどろどろですよ。

 まず、自分や誰かが女の子になるんですよ。それはもう空気のように当たり前のところまで来てしまっていて。この時点でだいぶおかしいんですけど笑

 それでもって、やり方が色々あるんですね。

 変身によって女の子になるのか、皮を着るのか、別の女性と融合するのか、女性キャラに呑み込まれてその一部となるのか。あるいは自分が女の子になってセルみたいな奴に呑まれるのか。

 そういうエロな世界を妄想しながらも、当時はいじめられたりで人生について深く悩んでましたから。

 昼休みや夜に不貞寝しながら、どう生きるのかとか、人の心の動きとか、もっと単純爽快なバトルとか、旅の話みたいなものを考えていったのも、この時期になります。

 この頃には、大学生になったらいつか何か書きたいという気持ちがむくむくと湧き上がって来てまして。ただ受験があったので我慢してまして。

 いよいよ大学生になるわけです。2009年のことでした。


・融合と変身のだすとぼっくす。(2010)

 大学生になってから初っ端、また衝撃を受けたというか。

 今まで考えてきたような世界観の具体的なイメージを一つ見せつけてくれたものが、この融合と変身のだすとぼっくす。です。なんと、これも現存しています! 素晴らしい!

 これはですね。男女のペアとかもっと多数の男女が融合して、ドラゴンとか、ロボットとか、魔法少女とか、一つの別の存在になってしまうというタイプのお話がいくつも載っていまして。

 特に私が大好きなのはラミアの話ですね。他に同じような作品がないか探しまくったほどですが、これしかないと思います。

 男子が一人、女子が二人いて、三人同士で愛し合ってるんですよ。女子の一人は溌剌系で胸は小ぶりで、もう一人は清楚系でおっぱい大きくて。で、交わりまくってあまりに高まったあまり融合していくんですが。

 まず女の子が二人、レズっているうちにくっついて蛇になっちゃうんですよ。そのまま融合した蛇が男の子の下半身を丸呑みにするんですが、下半身呑み込んだところで止まって、蛇が癒着して、今度は男の子の方が変身始めるんですね。声が高くなったり、おっぱいがむくむくしてくるんですよ。

 で、最終的に男の子の特徴と、一人目の女の子の溌剌さと、二人目の女の子の清楚さとか、あと大きなおっぱいを併せ持った、いっこのラミアちゃんになっちゃうんですね。

 これがもう、自分の中ではほんと衝撃的で。とにかくわけわかんないくらい興奮してしまって笑

 どのくらいかというと、一カ月くらい連続でネタにするくらいのアレでして。

 自分も融合もの書いてみようと思ったというか、これと出会ったことで、それまでぼんやり描いていた融合ものにさらにえげつないイメージがついて、本当に世界が変わりました。

 本当に本当にありがとうございました。そういう作品たちでした。


・理想の可逆TS、融合TSを探すも……ない!

 ここまで踏まえて、いよいよ自分が書く番になったんですね。それまで文章とか書いたことないから、まだ読者側でいたい気分もあって。自分の理想とするTSを探し始めましたよ。

 でもね、いくら良い作品はあっても、私のイメージそのものぴったりはないんですよね。なかったんですよ!

 理想のTSというものは、それに限らず自分の一番見たいものは、結局己の手で描かないと見ることはできないようです。

 10年代に入ると、次第に個人サイトの勢いも下火になってきまして、時代はなろう系TSに移っていきます。

 なろう系TSはね、女の子可愛いやったー! なんですけど、大体は健全な微えっちの範囲に収まってしまって、ファッション感がすごくて。

 これはこれで楽しいんですけど、これじゃないなあ感もすごくて。

 00年代の濃ゆいTSはまだあるんだけども、あまり数も増えず、ほとんど読まれなくなってしまって。過去の遺物みたいになってしまった。

 そういった状況で、もうこれは私が書くしかないと。

 下手とか言ってる場合じゃない。書くしかないと。

 で、私が最初に書きたいと思ったものは、可逆TSと融合TSでした。

 これらを考えたとき、まず手を付けられそうなのは可逆の方でした。

 主人公がころころ男女切り替わるような、男の子であって同時に女の子であることが自然体で生きていくような。自分同士でいちゃいちゃできるような。

 そんなものを描いてみようということで。

 あのフェバルが生まれたんですね。もう自分の性癖に正直にいこうと開き直った結果があれです。

 一方で融合TSの方は、中々文章力が足りなくて。

 自分の理想とするイメージが書き起こせなくて、ずっと眠らせたままになってしまったんですよね。

 フェバル連載から9年くらい経って、やっと一つ書けたのが融合症候群だったわけです。

 読んだ人はわかると思うのですが、あのどろどろぐちゃぐちゃに愛し合って溶け合って感は、今までの歴史の積み重ねがあって初めてできたわけですね。


 超長編であるフェバル3章、そして昔から思い描いていたのに書けなかった融合TSを書けたことで、一つ大きな自信になりました。

 私は物書きとしてまだまだ成長したいですし、楽しみたいですし。もっと色んな話を書いていくつもりです。

 すべてのTSものにありがとう。すべての融合ものにありがとう。

 ということで、この話は終わりにしたいと思います。

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