ライトノベルなホラーってちょっと違うのでは

火雪

第壱話

図書室。


私の居場所だった。小学生の時から休み時間、放課後、その場所が救いだった。

でも、本は好きではない。

場所が単純に好きだった。


本の捲られる紙の音。

古い紙の触感。

訪れた人がゆっくり歩く、所作。

独特な本の香り。


神聖な場所に思えて、この空間に居る時だけが、幸せだった。

そんなひと握りの幸せを小学生、中学生と噛み締め、高校生になっても同じ様に、救いを求めて図書室を訪ねた。


そこで、問題発生。


確かに今までも、図書室に居座り続ける本マニアは沢山、存在した。

大半は、教室の居場所が無く、仕方なく本とお喋りするしか無いはみ出し者たち。

別段、構わない。

問題にすらならない。


けど、彼女の存在だけが、問題だった。

見て見ぬ振りを出来ない問題児だったのだ。


彼女は図書室の番人だ。

図書室は確かに、読書をする場所だ。それ以外で、利用は出来ない。食事も出来ないし、飲み物を飲む事も許されない。たまにガムを噛む輩も居るけど、見付かれば強制退去になる。

あと無論だけど、お喋りは厳禁だ。騒音レベルが何dBか分からないけど、少しでもうるさいと言われれば、強制退去及び出禁を食う。

普通だったら、先生や図書員がその業務を担当するけど、彼女は自発的に番人を実施する。


本当に厄介だ。


図書室では番人だけど、外見が奇抜過ぎて、図書室外では彼女自身が主罰の対象だった。


校内なのに、ぽっくり下駄を履いている。

髪は長く、毛先だけが銀髪。

ふざけているのか、いつも狐お面を頭に付けている。

そして、こちらもオシャレなのか知らないけど、ヤツデの葉をいつも持っている。


そんな彼女の名前は、死取屋しとりや れいという。


続く。




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ライトノベルなホラーってちょっと違うのでは 火雪 @hi-yu-ki

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