第13話 輝く薬草

 魔物の子供は一目散に大きな鳥型の魔物に駆け寄り、その周りを跳ね回っていた。

 大きな鳥型の魔物はそれを一瞥すると、また目を閉じる。


 体を休めているのだろう。

 足を怪我している。噛まれたような傷跡だ。

 群れのボスとしてグモーターと縄張りを争って、怪我をしたのかもしれない。


 グモーター達は恐ろしかった。この鳥型の魔物の方が大きいが、奴らの方が獰猛だろう。


 私は治療をするべきか少し悩んだ。

 魔物とはいえ、この鳥型の魔物達は比較的人間と共存している。

 何かと被害を出すホッパーを食べてくれるし、人間に居る場所にはあまり近づいてこない。

 決して悪い魔物ではない。


 私は木の根元に生えている白い薬草を引き抜くと、葉の部分を細かく手で千切って魔物の怪我をしている部分に添える。

 道具袋から包帯を取り出して、解けないように固定する。


 白のハーブには解毒作用もあるから消毒も一緒にしてくれるから、これで傷はよくなるだろう。


 鳥型の魔物は再び目を開け、私を見つめている。

 魔物は聖女を嫌うという。聖女には魔物を滅ぼす力があるから、と言われていたが魔物の目からはそういった気配は見えなかった。

 私が聖女にはとても見えないのだろう。魔物から見ても。

 私はちょっと可笑しかった。


 鳥型の魔物は虹色の薬草? に目を向けると、私に向かって嘴を少し傾けた。

 その後、目をつむってしまった。寝てしまったのかもしれない。


 この虹色の薬草をくれるということなのかな。

 正直七色に光る草なんて不思議でしょうがないのだけど。


 私は虹の薬草と思われるものをゆっくりと引き抜いてみる。

 少し抵抗があったが、私の力でも抜くことが出来た。


 葉っぱの部分が虹色で、太陽に透かすと奇麗に輝く。

 どうやら実が付いているようで、小さな黄色い実がなっていた。

 私はそれを道具袋に潰さないように入れる。


 多分これは鳥型の魔物達の礼、ということなのだろう。

 このオアシスは秘密の場所の筈だ。この虹色の薬草も効用は分からないが貴重なものに違いない。


 私は眠っている魔物の邪魔をしないように、静かにその場を後にした。

 空を被った魔物の子供が私を見送ってくれる。


 先ほどの場所に戻ると、太陽が傾き始めていた。

 良い事をしたの……だろうか。分からない。


 でもあの鳥型の魔物と争うのは私の役目ではないと思った。

 そもそも敵意がないので私には何もできないのだけれど。


 不思議な体験だったけど、一先ず街に戻ろう。


 街に戻って、私は以前薬草を買い取ってもらったおじさんに採取した薬草を買い取っ貰って、虹色の薬草を見せる。


 おじさんはマジマジと虹色の薬草を見て、買い取れないからギルドに持っていきなさいと言った。

 貴重な薬の材料になるもので、とても高価な上に国が常に買い取っているとのことだった。


「いやぁ久しぶりに見たなぁ。お嬢ちゃん……これを見つけた場所は絶対に誰にも言っちゃっちゃだめだよ。悪い奴らも居るからね」


 薬草に成っていた実に関しては分からないと言われた。虹色の薬草自体珍しくてその実となると聞いたことがないそうだ。


 薬の材料になるなら、多分この実も効能があると思うのだけど。


 結局ギルドに持っていって薬草は路銀には十分すぎるほどのお金になったのだけど、実に関しては首を傾げられた。本当に薬草に成っていたのかとまで言われたので、私は少しだけ嫌な気分になってしまった……。


 仕方ない。実に関してはこのまま持っていよう。いざとなれば薬代わりになるかもしれない。


 私は宿に戻る前に保存食や替えの衣類などを買い込む。

 次の街は少し遠い。馬車代を払うと手元にお金が残らないので歩いていくしかない。

 ここでもう少しいても良いかなと思ったのだけど、多分ここで出来ることは私にはもうない。

 そんな予感がする。


 荷物を宿の部屋に置き、私は身を清めてベットに横になる。

 次の街は確か、甘い果実が有名な場所だった。


 公爵家では七日に一度食べていた果実で、私はそれが好きだった。

 向こうに着いたら食べてみよう。


 そうしている間に私は眠りに就いた。



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公爵令嬢として生まれた私は待望された聖女でした。聖女としての才能がなくて見捨てられましたが、武の極みに至る才能はあったみたいです。 HATI @Hati_Blue

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