最終話 休店・新たな旅立ち
任務を終えた麗花は義と共に冥土喫茶に戻って来た。
大王「苦労を掛けたな」
麗花「楽しかったぁ~」
大王「そうか」
麗花「死んでから他の人ととことん話すこと何てなかったから」
義 「霊同志話すことは出来ないはずだからな」
麗花「そう言えば、列に並ぶ人?たちは沈黙だったわ」
大王「さて、麗花よ、改めて聞く。転生を受けるか」
麗花「受けます。サトカと話してやり直したくなった。知らない
世界がいっぱいある。それを経験してみたい」
義 「では、手続きを行う。便宜は図れないが今回の事がバレな
い内に早急に受理させましょう」
大王「良しなに」
それから間もなくして、麗花は大王の計らいで渡し船の特等席に陣取り、大王の審議を受けた、形式上の。審議を終え、大王と義は転生の門を潜る麗花を微笑ましく見送った。
義 「また、次のメイドを探さないと」
大王「それだが、引継ぎを行わないまま麗花を見送った以上、暫
く喫茶を閉めようと思う」
義 「分かりました」
大王「人間界へ干渉した是非は分からぬが、魔界の者は一機に善
意の仮面を喰らいに行だろう。あとはアルト次第だ。寝返
って貧困者を喰らう者に加担するかもしれない。その為に
蓮華を置いてきたが今後のことは分からないわ」
義 「そうですね。魂界の者を使うには意識の高さと繊細さが必
要になり悪の団体の犠牲者の中にそのような者がいるかは
期待薄ですからね」
大王「歯痒いものよな」
義 「可笑しな輩を育てたのも無関心と控えめな態度です。可笑
しい事を可笑しいと声を上げる事の大事さが沁みますね」
大王「偽善者か。厄介な者よ」
大王と義は、神の教えを拡大解釈し腐った考えを信じる人間に怒りと絶望を感じていた。自由と謳いながら自由な発想をあらゆる言い訳を用いて柵の中に押し込む可笑しな考え。自由とは判断する見識の上に成り立つ。誰が何を思うが自由だ。ただ、他人に迷惑・不快感を与えない。考え・存在を認めること。考え・存在を認めさせたい者は自己主張するだけでなく、負を受け入れる強さを持つべきだ。
○と✖、白と黒、光と影。△、灰色、トワイライト。中間色は信号の黄と同じだ。基本は、余裕をもって止まれだ。余裕を失くして突っ込みトラブルを起こす。ルールはルール。善と悪、神と悪魔。互いの領域を犯さず、上手く付き合う感情・思考のゆとりを持つことが、規制に苦しめられない知能のある生物の使命だ。
感情論に出口はない、事実があるのみ。塩梅は神が創造された基盤枠を守る味処。枠に治まらないものは、例外として認めればいい。それだけのこと。集団で過ごすには全員が納得するルールでなくとも大半が受け入れればそれを良しとすること。決して、特異なものとしない事。それが許容範囲だ。車のペダルにある遊びと呼ばれる動域だ。その動域は判断の正しさを確認する遊びだ。遊びのないペダルは結論が直接的で息苦しいもの。窮屈には遊び心がない。ギスギスしたセンスのない愚かな者の証だ。
閻魔大王は、現代を憂いていた。魂界の者と接した。魂界の者は人間に憑依し、人間を育てながら目標を見出し、達成さていた。裁く意味とは何か。閻魔大王は自ら創った冥土喫茶を通して感情に触れた。神界と魔界との狭間で現実を受け入れるしかない立場に歯がゆさを感じ始めていた。遊び心。気まぐれな思い付きだ。歪んだ現代の壁を揺さぶりたくなった。それが領域以外であっても。義は大王の意志に共鳴していた。動けば処罰の対象になる事もある。前例がないので予測すらできない。
大王「義よ、人間界に直接、メスを入れようと思うが」
義 「オペを投じても腐りきった人間界は復元できるか疑問で
す」
大王「過ちを正す風景に興味はない。表の世界を正すのに正義と
言うものを通せば、正せるものも邪魔が入り、正せなくな
る、それが現実だ。ならば、その現実にメスを入れる」
義 「メスを入れれば血もながれましょう、肉も切り裂かれまし
ょう。それでも行われる覚悟ですか」
大王「人間の過ちを正すため神々は天変地異で示唆される。しか
し、的外れだ。苦しむ者が異なる。神々にとっては人間は
皆同じに見えるのではないか。特別に頼ってきた者のみが
認知されることはあるだろうが、それは余りにも稀な事。
必要悪はないと言う者も人間界ではおる。その悪の力を借
り成し遂げられる事もある。物事は過程と結果だ」
義 「お言葉ですが過程は仮定。重要なのは結果だけですよ。そ
の結果を良き方向のものにするのが最優先かと」
大王「うん」
大王は、義と共にこの世を正す道を歩みたくなった。その術は容易ではないのは重々承知。出来る事から少しづつ駒を進める、失敗を繰り返しても。失敗とは人間界に直接触れる手探りの部分だ。そこにはそれを支持する者がいる。その者を牛耳るのは魔界なのか霊界なのか。その者の力量・関りも隠されている。それを見極めるには、経験を積むしかなかった。
大王は大胆な術でそれを探ろうと画策し始めたが、具体的に動ける確信を得られないでいた。前例のない未知の取り組み。鬼が出るか蛇が出るか、進む道には街灯も道標もない真っ暗な道だ。
大王の胸糞悪さの糞を拭き取る思いは、積年の思いとして形を成そうとしていた。その構想の足掛かりになるかも知れないのが「警死庁」の設立だった。
冥土喫茶を通して人間界に興味を抱いた、いや危機感を抱いた閻魔大王は、禁断とされてきた人間界への内政干渉に踏み出した。その方法は直接関わる事ではなく、閻魔大王が担当する現時代に最も近く理想とするパラレルワールドから選んだ世界だった。パラレルワールドの出来事は少なからず他の世界にも影響を与える。愛しき人が全くの他人であったり、事件の結末が少し変わっていたりする。しかし、大勢に影響はない。歴史の週勢力なのか、決まった未来の大筋は変わらない。とは言っても小さな変化はやがて大きな変化となるのも確かだった。大勢に影響がないように見えて、少しづつ変化するのが歴史の週勢力であると大王であり、何もかもが五里霧中のスタートだった。
※次回からは「警死庁死霊課粛清係」をお届けします。「冥土喫茶」にお付き合いいただき有難うございました。励みになりました。引き続き可愛がってもらえる「物」をと心掛け励んでいきます。宜しくお願いします。
冥土喫茶 龍玄 @amuro117ryugen
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