カウントダウン1話 束の間の人間界

 大王の指示の元、麗花と蓮華は人間界に降り立った。


蓮華「あの女性が対象者よ」

麗花「生前の私みたい。で、どうするの?」


 「後は任せよ」と蓮華は対象者の意識に入り込み、協力を引き換えに取り込みに掛った。総合理解によって融合出来る。この過程は大した問題ではない。蓮華は手慣れた過程を経て対象者と一体化を果たした。麗花は対象者を通して五感を体験でき、はしゃいでいた。対象者は代表・工藤悪夢が運営する団体・Solabo に世話になったアカウント名・サトカという女性だった。


麗花「憑依って楽しい~」

蓮華「勘違いするでない。人格を支配したわけでない故、思い道

   理には動かせぬでな。支配すれば洗脳となり、罪となる」

麗花「この女性と話せるの?」

蓮華「意識下で話せる」


 麗花はサトカの意識に語り掛けた。久々の同年代との会話に麗花は喜びを顕にしていた。蓮華は敢えて今回の要件から離れない話題だけを許可し、話が私生活に飛ぶのを制御していた。

 麗花はSolaboの団体とサトカの関りを聞いた。サトカは自分が関わる団体の事がSNSに取り上げられ「?」と思う事が多く、思ったことを内に秘めるのが苦手なサトカは思いの丈を吐き出したいと思っていた。その意識の臭いを餓鬼のアルトの配下の餓鬼優に嗅ぎつかれた。それを面白がったアルトにタイミングよく大王の気まぐれが伝わる。異例とも言える神界と魔界の接点が生まれた瞬間だった。

 麗花はサトカと意識下で話した。サトカとSolaboとの関係はサトカが家出してその日暮らしをしていた頃だった。サトカは「売り」を行って生活費を稼いでいた。ある日、客を探している時に

Solaboと出会った。


サトカ「話を聞くと働かなくても食と住が確保できるという。最 

    初は上手い事を言って「売り」をさせられるのかと思っ

    たけど連れていかれた所でそうじゃない事が分かった」

麗花 「何故、分かったの?」

サトカ「そこにいた子に聞いたのよ、個々での生活を」

麗花 「雰囲気で分かるものもあるからね」

サトカ「ひとつの部屋で数人で暮らす。プライベートは皆無だけ

    ど寒い夜を公園やなけなしの金でネットカフェで過ごす

    よりましかと思い世話になる事を決めた。最初はここは

    天国だと思った。他の施設では聞くところに寄ると自立

    を促される。私はそれがウザかった。働くのが嫌だった

    から。時給で目一杯働いても諭吉は手に入らない。「売

    り」を行えば約1時間、話し相手をすることなく天井を

    見てれば、相手が勝手にイってくれて手に入る上手くす

    れば諭吉が二人。そんな私にピッタリの誘い。自立を目

    指さない怠け者のね」


 麗花は蓮華が言っていた融合の意味が分かった。自分が経験していないことがサトカの体験で手に取るように感じられた。憑依とは対象者の五感そのものが自分の物になる過去の事も対象者の記憶として。同時に発言が嘘なのかを探る手立てがなかった。それを蓮華に問うと意識下で問い詰めれば返答に違和感を覚えるから、裏に何かあると考えればいいと教えられた。サトカの発言はあっけらかんとして内容はさておき、嘘がないと感じていた。


麗花 「生活費はどうしていたの?」

サトカ「詳しい事は知らないけど、いるだけでお金が国とか自治

    体・支援者から貰えるらしいんだ。たまに連れ出される

    けど、労働とかじゃないし、あっ、メイドみたいなこと

    を朝までやらされるけどたいしたことわないよ」

麗花 「家賃とかはどうしてるの?」

サトカ「何処から入金されたものを渡すの、それだけ」

麗花 「何処からか知らないの?」

サトカ「入所する時に役所に行ったけ。生活保護受を受けるため

    にとかで。私、めっちゃぴんぴんしていたんだけど親の

    DVがひどくて鬱病になって暫く働けないって、言えっ

    て。そしたら審査とやらがあっさり通って。そこから必

    要経費とか取られるの。でも、自分のお金じゃないから

    興味な~い」

麗花 「手続きは?でもそれあなたのお金じゃない」

サトカ「だよねぇ~。可笑しいなと思うようになったの。一部屋

    に9人いるんだけど一人家賃が6万5千円なの。9人か

    ら取っていたよ。過去の話だけどねぇ」


 麗花は悟ったサトカの発言をWiiterに投稿させるのが目的だと。サトカも麗花の日記を書いて置こうの提案を受け入れた。その際、役所に行く前に代表の工藤悪夢さんの指導を受けた。本人は罪の意識はなく、楽しんでいた。

 Witterへの投稿を終えた後、麗花はサトカからの憑依が解かれた。蓮華はサトカの身の危険を感じ、身を助ける良き縁を紡ぐため今しばらく憑依を維持することにした。


義 「麗花、任務は終えた。冥土喫茶に戻ろう」

麗花「楽しかったぁ~」


 


 

    



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