雨が燦燦と降った日

高黄森哉

雨の陽

 それは今でも思い出すことできる。自分は中学生だった。それに通学路を自転車で漕いでいた。雷が鳴り、にわかに雨粒が空から落ちてきた。

 

 自分はその時、ジャージだった。知り合いもそうだ、ジャージだった。驟雨の中を猛進したのを覚えている。記憶によると、あの雨は銀色だった。脚色はない。


 光が網状に厚い雲を走る。国道沿いの、知らない先輩が死んだ通学路の、頭上での話だ。瞬きのあとに、控えめな雷鳴がとどろく。余りにも控えめで、雨音の方が激しかったくらいだ。


 飛沫は白かった。白く燦燦としていた。土砂降りのなかで、ジャージの自分達は、濡れネズミになった。震えが止まらない。


 寒さをこらえ、吠えながら、ペダルを踏む。電光掲示板は零度を表示する。つまり、いつもより暖かな日だ。冬は、氷点下が普通な地域だ。


 雷の陽が、ぱちぱちと、知り合いを照らした。そうでなくても、雨粒の光線が、身体の輪郭を、ぼんやりと浮き上がらせていた。降りてきた粒が、いたるところで弾けた。世界は霞かかる、霞のベールをまとわせる。白昼夢のようだ。記憶では、全てが輝いて見えた。




 冷ややかな雨の陽だ。突き放すような銀の灯だ。これは、ある雨の日の話だ。


 


 

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雨が燦燦と降った日 高黄森哉 @kamikawa2001

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