第88話 サヨナラだ

「召喚魔法は使わないのかい?このままでは私に傷ひとつ付けることは出来ないよ?」


「ふっ、全てはお見通しなのだな。だが召喚魔法は使わない…。俺の力だけでお前を倒してやる」


「へぇ、それはそれは。ただ召喚魔法も君の力の1つなのではないのか?」


 俺の言葉にハッとしたようで魔導王は遂に牛太郎を召喚してくる。久々に見た牛太郎は何だかデカくなっている。そして俺を見下して来やがる…。


 すると早速牛太郎が天災級のサンダーストームを使ってきた。


 くっ、これは…ヤバイ…。威力が桁違いだ。俺の魔法障壁は張っては破られ張っては破られの繰り返しとなる。これは魔導王と同じくリフレインが乗っているな。頼むよ雫…。と思っていると魔導王の大地の怒りも同時に撃ち込まれてくる。ひゃ〜アドレナリンがドバっと出てくる。


 流石にこれは不味いな…。俺はやむを得ずスキル縮地を使って避難する。それでも俺はまだ無傷だからね!強がって言ってるんじゃないんだからね!


 それにしても…牛太郎め!鼻で笑ってやがるよ!

今懲らしめてやるから覚悟しておけよ?と思っているとおそらく魔導王がエクストラスキルを使ったのだろう。牛太郎が咆哮し凄まじいほどの圧が発せられてくる。


 これが魔導王のエクストラスキルの「オーバーロード」か。これは牛太郎が魔王級筆頭より強くなっているわ。


 俺は牽制の意味も込めて牛太郎にF-バーストを撃ち込むが進化した魔法障壁の為ダメージは0だ。俺は笑いしか出てこないよ。普通の魔法障壁なら消し飛んでいる筈なのだが…。


 それにしても楽しいなぁ。こんな気持ちになったのは産まれて初めてだよ!余命幾ばくもなかった俺の人生でこんな気持ちが味わえるとは。あの日俺の枕元に現れたダンジョンコアには感謝しかないな。


 そんなことを考えているのに牛太郎と魔導王はお構いなしに魔法を撃ち込み続けてくる。全く…良いコンビだな。そしてまたサンダーストームを撃って来た。今度のは流石にヤバイ!俺はまた縮地で避けるがそこへ魔導王の「天の怒り」が降ってくる。


 それを魔法障壁で耐えているとまたサンダーストームがくる。俺の魔法障壁は消し飛び遂に傷判定が下ってしまった。あ〜あしょうが無いなぁ。


 俺は空間から大剣を取り出して上から下へ一閃する。魔剣「ダーインスレイヴ」一度鞘から抜くと生き血を全て吸うまで鞘に収まらないと言われる魔剣だ。


 そしてスキル「次元殺」を乗せる。このスキルは斬撃を飛ばすのではなく次元を超えて斬りつけるスキルだ。なので必中スキルとなっている。


 その次元刹で牛太郎を真っ二つに切り裂いた。唖然とする魔導王の目の前で牛太郎は消えていく。


 ふぅ〜。これで1つ目の目的は達成出来たわけで…ただ予定外に傷が付いてしまったな。まあどうせここ以外に会話は聞こえていないのだからいい事を教えてあげよう。


「その梢という女はこちらの世界で元気に生きているよ」


「えっ?!」


 魔導王はまた唖然とするが、俺はお構いなしに続ける。


「教えるのは1つだけという約束だからね。そしてサヨウナラだ魔導王よ。命だけは取らないでおいてあげるからね」


 俺は魔法「バイオレイトマインド」を使う。俺の手の先から黒いモヤが出て魔導王に纏わり付く。その名の通り精神を侵す魔法だ。


 魔導王は両膝を付き頭を抱えて苦しみだす。全身は恐怖で震え糞尿を垂れ流し始める。頭髪は見る見る真っ白くなって行き、目からは涙が溢れ出し焦点を失い挙動がせわしなく動き回っている。口や鼻から汁を垂れ流し始める。廃人の出来上がりだ。


 俺は自分で勝負アリの声を上げる。すると既に会場の声が聞こえるようになっている筈なのだが歓声が一切聞こえて来ない。まあ俺の恐ろしさを改めて認識してしまったか?


 すると転送門が現れ魔導王パーティが駆け付けて来る。ヒールなどを掛けているがそんなものでは治らんよ。すると戦乙女が魔導王の口の中に銀色の薬の入った瓶を突っ込み無理矢理飲ませる。すると魔導王の目に精気が戻ってくる。しかしそこで魔導王は気を失ってしまったのでパーティメンバーに担がれて退場して行った。


 何にせよこれで第一回バトル大会の全行程は無事に終了したと言うことだよね。時刻は日本時間で夜の6時を回ったところだ。なので特別にもう一泊しても良いと言うことにして大会終了の挨拶をする。これでもう一日分のDPもゲット出来るぜ。最後はまた雫が観客を煽って大盛り上がりしている。大人気だな。


 俺はコアルームに戻りもう一度魔導王との戦闘の映像を見直している。次元殺までは会場は大変盛り上がっていたのだが、牛太郎が真っ二つになると一瞬で静まり返ってしまった。


 そして魔導王の姿が変わっていくと悲鳴まで上がっている。観客席で観戦していた剣姫や魔導王パーティのメンバーなんて立ち上がって今にも飛び掛かって来そうな形相で俺を睨んでいるや。


 まあこれ以外の決着は魔導王の死以外には無かっただろうしな。これで良かったと俺の中では納得しておく。


 よし、牛太郎の能力をイジっておこう。と思ったのだがどうやらまだ魔導王が生きているので契約は続いているようだ。ただ俺が真っ二つにしたので強化はリセットされているはずだ。だよね?リア?


『はい、それは間違いなくリセットされています。次回召喚される際はサブマスターが制作した初期値に戻っています』


 との事だったのでこれで安心だね。


 それにしてもクッソ疲れたわ。まじでヤバかったなぁ。オーバーロード後の牛太郎は魔王最強の悪魔王や蝿の王よりも強くなっていたと思う。それに装備も込みだからとてつもなかったなぁ…。


 ……でももう一度戦いたいな。命がけのバトルってこんなに楽しかったんだなぁ。今ならソロ忍者の気持ちが凄く良く分かるや。これは一回魔導王のお見舞いに行って感謝を伝えないとな。


 そんな事を考えていると雫が帰ってきた。


「あれ実は兄ちゃん結構ヤバかったでしょ?ギュウちゃんのオーバーロード化は凄かったよね!」


「あのなぁ…。俺が苦しんだのは誰のせいだと思っているんだ?はぁ、まぁ言ってもしょうがないか…それより今度魔導王のお見舞いにでも行ってあげようかと思ってるんだ」


 俺は雫に今回のバトルがとても楽しかったことを伝える。本来なら何を言っているんだと笑われてしまう事でも俺の本質がわかっている雫は、良かったじゃない!と一緒に喜んでくれる。そして俺が楽しめる事をもっとやって行こうと背中を押してくれた。


 今日のバトルは今後一生忘れることは無いだろうな。ありがとう魔導王。





     ーーー 第四章 完 ーーー






 四章はダンマス視点で進めてみました。しばらく休んだ後五章を投稿をしていきます。次章では新たなヒロインが登場する予定です。何話になるかは分かりませんが引き続き読んで頂けると幸いです。それでは皆様良い年を!お餅には要注意ですよ!


 


 


 







 

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ダンジョンコアを手に入れたので東京の地下でダンジョン運営してみる。 ガルキング @horoyan

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