最終話 2年後。19歳の藍里ちゃんと

温かい。



いつまでこんなことしてたっけ。あの時。



ああ、清太郎と付き合う前までか。私が。

2年前……。


ママがいない時に何度も抱きしめてくれて。

ママが帰ってきた時があって……その時はびっくりしたよね。


ふふ。

時雨くん、あたふたしてて。私は寝たふりしてその様子聞いてた。


……。


ママもね、悪い人でさ。私が寝たふりしてるの知ってるのにわざとあそこで時雨くんとエッチしたって。


……勘が鋭いのよ、ママは。


今日も出かける時だって何も言ってこなかったけどなんか態度でわかった。


ふうん、って。

どこに行くの? とかじゃなくて、ふうん、だけだよ。


えっ。私も勘が鋭いって?

そんなことないよ。



てか本当にこのことが原因で別れたんじゃないよね? ……ママも教えてくれなかった。





てか……時雨くん。タバコ吸ってるよね。

バイトの時は吸ってないけど。灰皿もあるし。



ママと別れてから吸いはじめたんだね……


ううん、嫌じゃない。

なんかこの匂い落ち着く。


……時雨くん、嫌だったんでしょ。私が別れたパパの面影を重ねて時雨くんに抱きしめてたこと。


嫌じゃなかったって……下心あるのわかってた。だって……今もだけど……熱くなってる。体が。


ねぇ、もっと抱きしめていい?


今は時雨くん、あなたのことだけを思って抱きしめたい。



……今まで部屋に誘ってくれなかったのに何で急に今日は誘ってくれたの?


なぁに、黙っちゃって。

じゃあ私はもっとぎゅーってしちゃう。


時雨くんも……もっと力入れて抱きしめて。そう……。すごくバクバクしてる、わたしもバクバクしてるでしょ。



……顔真っ赤。


……




……彼はもちろんこのこと知らないよ。




……清太郎がさ、東京の大学行っちゃってさ。久しぶり。こうやって抱きしめられるの。


別に時雨くんは彼の代わりじゃないよ。



ちゃんと一ヶ月に二回会いに行ってるし。



そういうこともしてるし。

……そういうことって、そういうことだよ。



でもね、一昨日さ。行ったけど。




知らない匂いがしたの。

多分私以外の女の人が部屋の中にいた。



……少し前から私わかってた。

女の勘って鋭いでしょ。やっぱわたしはママの娘。


時雨くん、何笑ってるの?


もう。



だから私は今日ここにきて、こう抱きついてるの。久しぶりに。


じゃなかったら来ないよ。


てか彼氏いる人を普通家に呼ぶ? それにこうして抱きつく?


私もでしょって……。


いいじゃん。



ねぇ、時雨くん。



何笑ってるの。


時雨くんって言われるの本当は嬉しかったんでしょ。恥ずかしがってたけどもう慣れちゃった?


慣れないって、なにそれ。


時雨くんは時雨くんだもん。




……。





……。




見ないで……見ないでよ。

辛くない。



浮気されてるなんて。


しょうがないよ、遠距離になったから……毎日テレビ電話もしてるのに。メールもしてるのに。



……でもね、テレビ電話しない日があってね。その時……きっと。



もういいや、ごめん。時雨くん。



私も浮気すればって……馬鹿なこと考えちゃった。


でも次会った時に別れる。……。



あ、ちょっと



手を離して……


……




……。



離してくれないから……言っちゃうね。


初めて時雨くんを見た時から好きだった。


でもママの恋人だったし、彼氏もできて……心の奥底にしまってた。


ねぇ、時雨くんは……


私のことどう思ってた?



聞いてもいいかな……。

すごく心臓バクバク言ってるよ。


時雨くん。








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恋人の娘が可愛すぎるのだが。 麻木香豆 @hacchi3dayo

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