case11-5 『向日葵の色彩』



 アマリアと同じ症状に悩む女子生徒は、高等部の空き教室に集まっていた。女子生徒たちの中には初めて見るエマに緊張する者も混ざっていた。

 その数は十数人と思ったよりも多くてエマは表情には出さないが若干の驚きがある。


「性別は統一、年齢はバラバラ、共通点は貴族で美人ってくらいですか」


 容姿の美しさを言及され大半が肯定し、少人数が謙遜をする。

 お嬢様として周りから甘やかされて育ってきた故の自己肯定感の高さだろう。


「にしても、この人数を短時間で集めましたね。全員友人だったりします?」

「友人というより趣味仲間といった方が正しいです」


 エマの問いにアマリアが答える。


「なんの趣味ですか?」

「それは人形ですわ!」


 勢いよく立ち上がり、声高らかに宣言するのは縦ロールがよく似合う女子生徒だ。

 彼女は高等部三年、クーニグンデ・アイメルト。

 よくこんな整えるのが面倒臭そうな髪型をしているな、とエマはしみじみ思う。


「人形ですか?」

「ああ、と言っても好みの人形の種類は人それぞれだけどね。私は瑞穂ノ国のカラクリが好きなんだ。だから、それに関連する情報や資料があったら教えて貰うんだ。逆も然りだね」


 長い髪を後ろで一つに束ねた切れ長の瞳が特徴的な女子生徒。

 中等部三年、ナターリエ・デュルラー。

 男女問わず人気がありそうな、凛とした雰囲気をエマは感じた。


「なるほど、人形好き同士で情報共有するコミュニティを形成しているということですか」

「その通りですわ! レア物の情報となればそれこそコミュニティの力が必要になってきますの。互いを助け合い、趣味を充実させる。それは今後の関係にも確かな実りを与えてくれますわ」


 今後の関係、という部分にクーニグンデの貴族としての一面がちらつく。

 貴族同士の交流は大いに結構。

 だが、行き過ぎはくれぐれも気を付けてもらいたいものだ。


「レア物というのは例えば何があるんですか?」

「有名どころで言えばソロモンシリーズですね」

「あぁ、確かにレア物ですね」


 アマリアの答えにエマは納得する。

 世界に七十二体しか存在しない人形。噂によると破損していない代物は十体もないらしい。

 ソロモンシリーズとは何かと縁があり、今では同僚にソロモンシリーズを操る人形遣いがいるため、エマからすればあまり特別感はない。


 すると、クーニグンデが縦ロールを激しく揺らしながらエマに詰め寄る。


「エマさん、本物のソロモンシリーズってどんな感じなのか教えてくださらない!?」

「あ、えっと」

「大富豪エッカルト・バルテンが所有していたパイモン。その今の持ち主が第三皇女オリヴィア・シャルベール様であることは周知の事実。ということはエマさんも当然見ていますわよね!? どうなのかしら!? 本物のソロモンシリーズは!?」


 鼻先がくっつく距離まで顔を近付けてくるクーニグンデにエマは露骨に顔を背ける。

 ソロモンシリーズに対するエマの所感は一番最初に見た時から変わりない。存在そのものが面白くない、それに尽きる。

 とはいえ、素直に述べたらここに集まった人形好きの生徒たちから反感を買うのは予想するまでもない。


「落ち着きなって先輩。そんな詰め寄ったら答えられるものも答えられないよ」


 ナターリエが若干呆れたように静止を促す。それからエマに顔を向けて謝罪の手合わせをする。


「ごめんな、エマ様。先輩は無類の人形好きで時に見境がなくなるんだ。とはいえ、ソロモンシリーズは人形に関心ある奴ならどうしても気になるってもんさ」


「そうなんですね。うぅん、生身の人にしか見えないので人形好きの方からしたら違和感を感じると思いますよ。人形としての良さがちゃんとあるのか素人の私には判断できないです」


 ソロモンシリーズを直に見た者の所感を聞き騒つく女子生徒たち。

 エマは軽く咳払いをして質問を再開する。視線の先に居るのはアマリアだ。


「消えた友人もこのコミュニティに居たんですか?」

「はい」

「となると原因はここにありそうですね。集まる頻度はどの程度ですか?」


 次の質問に答えたのはナターリエだ。


「適当だね。明確な予定を立てて集まる、みたいなことはないから。大抵は就寝時間前に女子寮のラウンジでお茶飲みながら話しているかな。人数も日によってまちまちで、全員集まる方が珍しいね」


「まぁ、部活というわけではないですもんね。では、最後に全員が集まったのはいつでしょうか?」


 クーニグンデが答える。


「一ヶ月前ですわ。それ以降、このコミュニティは正体不明の術式に悩まされているんですの」


「なぜ、その時は全員集合したんですか?」


 女子生徒たちが一ヶ月前の記憶を掘り起こす。

 一番早く答えに辿り着いたのはアマリアだった。


「えっと……ああ、そうです。ちょうどその頃、ミヌエットの一画が大破した事件があって、それにソロモンシリーズを操る人形遣いが関与しているって噂があったんです。私含めて、気になるということで女子寮のラウンジに集まって意見交換していました」


「そ、そうなんですね」


 嫌な汗が頬を伝うのをエマは感じていた。

 ミヌエットの件は事後処理も迅速に行われ、情報統制を敷いたはずだ。

 どんなに最速、最善の対応をしても人の口に戸は立てられないということか。


 それに、アマリアたちを苦しめている問題に間接的だが関与していることにエマは申し訳なさを感じた。

 だが、考えてみれば話も聞かずに殺しにきたロアの方が責任重いのではないか。


「噂で言ったら女子寮にもソロモンシリーズが夜な夜な出るって話ありますよね」


 女子生徒の一人がそんなことを言う。

 すると、それまで沈黙していた生徒たちが口を開き始める。みんな噂話は大好物のようだ。


「その噂、最近よく聞くよね」

「わたしのご学友が実際に見たらしいの」

「え〜羨ましいですわ」

「それデマって聞いたわよ。ソロモンシリーズは操ること出来ないらしいの」

「操れないのは嘘。人形遣いの件が説明出来なくなってしまう」

「ミヌエットのは自律型って話聞いたのだけれど」


 盛り上がっている女子生徒を静かにさせたのはナターリエだ。手を何度か叩いて、その場の空気を強制的に引き締める。


「はいはい、噂話は後でね。先輩たちも」


 こうして場を整えてくれる人がいると助かる。

 大人数から話を聞こうとするとどうしても話が逸れることが多くなってしまうのだ。

 エマは再び話を逸れることを念頭において、把握しておきたい事柄について質問する。


「睡魔に襲われるとのことですが、寝てから起床するまでどれくらいの時間を有しますか? 右端の貴女から順々に答えてください」


 一人ずつ確認を取っていく。

 時間はかなりのバラつきがあった。数分で起きる者もいれば数時間寝続ける者もいた。

 話の中で分かったことは、行方不明になっている女子生徒はかなり長い時間寝ていたとのことだった。


 話を聞き終えたエマはああでもない、こうでもないと話をしている女子生徒たちの声を環境音にしながら濡羽色の毛先を弄りつつ思考を巡らせる。

 少ししてエマの指が止まり、その場に居る全員に向かって言う。


「皆さんを悩ませている睡魔について原因が分かったと思います」

「本当ですか?」


 希望に灯された表情を浮かべるアマリアにエマは首肯する。


「確認が必要ですけど、ほぼ間違いないかと」

「行方不明の二人はどうでしょうか?」

「その件含めて、今日中に片を付けると約束します」


 女子生徒たちは安心した表情で胸を撫で下ろす。

 その様子を金色の瞳に写しながら、エマはゆっくりと部屋を後にした。



×××



 ロアはイヴと共に貴族用の女子寮にやってきていた。

 ラウンジのど真ん中に立ち、室内をぐるりと見渡す。設置されているソファーやテーブルはそこら辺のホテルよりよっぽど高級品だ。

 共有スペースがこれなら生徒の部屋もホテルのスイートルームレベルなのだろう。


「反吐が出る」


 ここに来る途中に見た平民用の女子寮との差にロアは舌打ちをする。


「お姉ちゃん、これからどうするの? 夜までまつ?」

「そんなの時間の無駄。痕跡を探す」


 探そうとしているのを正確に述べるなら起動時に炉心から発露するソロモンの魔力の残滓だ。

 ロアは一階、一階懇切丁寧に、僅かなスペースにすら目を光らせて確認していく。

 小一時間ほど経って、痕跡探しに飽きてきたイヴが声を上げようとした時、ロアの足が止まった。


「どうしたの?」

「声が聞こえる」

「ぜんぜん聞こえないよ」


 イヴに聞こえないのは無理もない話だ。

 ロアは強化魔術で聴覚を日常的に強化している。僅かな物音一つ聞き逃しただけで命を失いかねない闇の世界で生きていた時の名残りである。


 彼女が聞き取った声は日常会話とは思えない、助けを求めて呻いているような言葉にならない声。だからこそ反応したのだ。


 ロアは声の聞こえた方へ、一切の迷いなく進んでいく。階段を上がり新たな階層へと踏み込む。それから少し移動した後にとある部屋の前で立ち止まった。


「ここから聞こえる」

「あれ? この部屋おかしいよ」

「何?」

「とびらのところにいっぱい術式がかけられてる」


 言われて確認してみると確かに様々な術式──侵入阻害、感知系統──が扉に付与されていた。といってもそのどれもが杜撰な構築だ。


「これくらいならすぐに解除できるけど、お姉ちゃんどうする?」


 わざわざ術式を張り巡らせているということは、絶対に入られたくないと言っているようなものだ。

 先ほど聞こえた声と無関係とはとても言い難い。


「やって」

「うん!」


 大きく頷いてイヴは術式の解除を始める。

 類稀なる魔術の素養があるイヴからすれば少し絡まった紐を綺麗に解くに等しい行為だ。

 ものの数十秒で術式は完全に解除された。


 ロアは部屋に入る。

 寮とは思えない広さに一瞬苛立ちを感じ、声が聞こえる別部屋の扉を開けた。

 そこはドールハウスの一部分をそのまま現実世界に持ってきたようだった。

 改造された内装、お洒落なテーブルと椅子。テーブルの上には一眼で見ても高級品と分かるティーポットセットが置いてあった。


 だが、内装よりも視線を釘付けにするのは椅子に腰掛けている女子二人だ。

 綺麗に髪を整えられ、化粧を施され、豪奢なドレスを身につけていた。

 女子たちはロアとイヴが現れたにも関わらず身動き一つ取らない。だが、眼球だけは涙を流しながらしっかりと二人を見つめ、殆ど開いてない口からずっと聞こえていた呻き声が溢れていた。


「人の部っ────っっ?」


 不可解な光景に思考が止まっていたところに背後から聞こえてきた声。

 ロアは声の主を見るよりも前に、魔力の糸を編み、その肉体を瞬時に拘束する。

 声の主──縦ロールの女子生徒は呆気なく身体の動きを縛られてカーペットに受け身なしで倒れ込む。


「え? この人……どうしてたおれているの?」

「アンタはその二人をなんとかして」


 イヴに素っ気ない指示を出してから、ロアは情けなく転がっている女子生徒の縦ロールを強引に引き顔を無理矢理引き上げる。


「痛い! 痛いですわ! 離してくださいませ!」

「黙れ。アレはどういうことだ?」


 すると、開きっぱなしになっていた扉から新たな人物が二人登場する。

 その内の一人が部屋の中で起こっている状況に驚愕の悲鳴を上げる。


「なんですかこれは!?」

「これはこれは。面白い展開になっていますね」


 世界で一番嫌いな奴の声が聞こえてきて、ロアの機嫌が一気に悪くなる。

 濡羽髪、金瞳の死神を睨みつける。


「なんでお前がここにいる?」

「それはこちらの台詞でもありますよ。私は先輩が抱えている問題の解決に奔走していたんです。この瞬間、解決しましたけど」


 奥の部屋からイヴ、それからドレス姿の女子二人が出てきた。

 アマリアは女子たちの名前を呼び、駆け寄る。

 イヴはエマの姿を見て顔を強張らせ、小声で呟く。


「なんでいるの?」

「イヴちゃんたちはどうしてここに?」

「すごいお人形さんのなぞをお姉ちゃんと解こうとしていたの」

「ああ、なるほど。でしたら謎の終着点はここですよ。私とイヴちゃんたちは知らず内に同じ問題を追っていたようですね」


 疑問符を浮かべるイヴ。

 女子二人の体調面を確認していたアマリアがエマに向けて言う。


「エマ様、説明をしてくれませんか? 状況的にクーニグンデ先輩が犯人というのは分かります。でも、それまでの流れが全然分からなくて」


 エマは入口の扉を閉めて、全員が集まっている方へと歩きながらゆっくりと組み立てた推測を語り始める。


「クーニグンデ先輩は人形好きです。その中でも特に心を奪われているのがソロモンシリーズ。先程のパイモンへの食いつきでそれはよく分かりました。その熱心さは熱狂と言っても過言ではないものでした。積もりに積もった熱は一つの願いを生み出しました。──ソロモンシリーズに直接触れてみたい、操ってみたいと」


「とはいえソロモンシリーズを入手するのは極めて困難です。世界に七十二体しか存在しないうえに購入するとなったら信じられない大金が必要になります。いくら貴族であっても学生の身で手を出すのはほぼ不可能です。しかし、願望は膨れ上がる一方。遂に我慢の限界に達したクーニグンデ先輩は行動を起こしました」


 ロアは縦ロールを掴んだまま、クーニグンデがしていた凶行を口にする。


「人間をソロモンシリーズの代わりにしたのか」

「………………」


 クーニグンデは反論一つせずに無言のまま。表情からは諦めと観念が滲んでおり、抵抗する様子は全くない。


「少し調べました。クーニグンデ先輩の術式は『催眠』。アマリア先輩たちが悩まされていた睡魔は術式の掛かりやすい人を選別するための手段でした。選ばれた二人は催眠によって身体の自由を奪われて擬似的な人形にされていた」


 エマは呆れたように続ける。


「夜な夜な女子寮にソロモンシリーズが現れるという噂の真相は、クーニグンデ先輩が人間を操っていただけ、ソロモンシリーズごっこだったわけです」


 噂の正体がたった一人の生徒の身勝手な自己満足と知り、ロアは苛立ちを露わにする。

 何よりも不愉快なのはこんなつまらないことにソロモンシリーズの名が使われたことだ。


「なんでこんな下らないことをした?」


「幼い頃、私は一人の同い年くらいの女の子に出会いましたの。いえ、出会ったというより見つけたと言った方が良いかもしれません。結局、話しかけることは出来ませんでしたから。彼女は信じられないことにソロモンシリーズを操っていましたわ。美しかった。音楽を奏でるかのような繊細な指捌きで人形が人間のように動く姿に時間が経つのも忘れて見惚れてしまいましたわ」


「………………」


「そして、私も彼女みたいにソロモンシリーズを操ってみたいと思いましたわ。けど、残念ながら人形遣いとしての素養は皆無でしたわ。それでもあの時の感動は色褪せることなく心に焼き付いていましたの。そして、ミヌエットの噂を聞いて諦めていた思いが再び湧き上がってしまって。せめて気分だけでも味わいたいと考えてしまい、このような愚行を犯してしまいましたわ」


 動機を吐露するクーニグンデ。

 彼女が語った少女について思い当たる節があるどころではないエマはロアに視線を向ける。

 当のロアは先程から動かない。だが、縦ロールを掴んでいる手には汗がじんわりと滲み、フードの奥に隠れている頬にも汗が伝う。


「……エマさん、どうして私だと分かったのかしら?」

「貴女だけは睡魔の原因を術式と断言していましたから」


 そこで疑念を抱き、揺さぶりをかけてみたというわけだ。

 クーニグンデは自身の犯行がバレたと確信し、監禁していた女子生徒たちの記憶を催眠で改竄した後に解放しようと自室に急いで戻ってきた。

 そこでロアとイヴに遭遇し、現在に至る。


「そんなのあまりにも自己中心的です、クーニグンデ先輩。一体どんな感情で私たちの側に居たんですか」


 失望の色が混じった声色のアマリアの言葉にクーニグンデは返す言葉もない。


「自覚はしていますわ……。申し訳ないと思っていましたわ。でも、どうしても止められませんでしたの!」


 人間関係を崩壊させるのもお構いなしに自分の欲望に忠実になったクーニグンデの凶行。その原因と引き金を作ったロアとエマはあまり強く言えない。


 すると、ずっと黙っていたイヴがクーニグンデに話しかける。


「そんなにすごいお人形さんが好きなの?」

「ええ……最も人間に近い人形、冒涜的で背徳的な美しさを兼ね備えた至高の芸術品。ですが、それ以上に私はソロモンシリーズを巧みに操る彼女の美しさに憧れを抱いておりましたの」

「じゃあ、その人に会えればもう悪いことしない?」


 クーニグンデが勢いよく顔をあげて、激しく縦ロールを縦に揺らす。


「もちろんですわ! あ、いえ、その機会がなくてもこのようなことは二度としませんし、自分の犯した罪は償うつもりですが」


 イヴはロアの方に顔を向けてにこやかな笑みを浮かべる。


「お姉ちゃん、交換条件」

「お、お前……」


 フードの奥で顔を引き攣らせ、わなわなと身体を震わせるロアを見て、エマはアマリアに耳打ちをする。


「私はこれで退出しますね」

「え? あ、エマ様?」


 軽やかにその場から離れ、廊下を歩くエマは穏やかな表情で呟く。


「私が居たら貴女の青春が台無しになってしまいますからね」




×××



 後日談。


 魔導図書館の屋上には銀髪の教師と濡羽色の少女の姿があった。

 綺麗な形をした唇から吐き出された紫煙は青空へと昇り溶けて消えていく。


「それで、その後どうなったの? 縦ロールちゃんは」

「特に何もありませんよ。教師、教育委員会への報告はせず内々で話し合い和解になりました。本人は罪を償おうとしていましたが、被害者全員が謝罪だけで十分だと」

「そうなの?」

「まぁ、クーニグンデさんがしでかしたおかげで人形好きとしては夢のような体験が出来ましたからね。寧ろ感謝しているんじゃないですか」


 エマが去った後、ロアは全員の前でソロモンシリーズを披露したらしい。

 本物に触れられ、その上動く姿まで見ることが出来た人形好きの女子生徒たちは興奮と感動の涙を流し、中には失神する者もいたとか。


「ああ、そういえばイヴから聞いたんだけど、あの子初等部の子に大人気らしいわよ」

「そうなんですか?」

「『ぬいぐるみのお医者さん』って慕われているとか」


 ふと、下に視線を向けると歩いているロアの姿が見えた。相変わらず制服の上に外套を羽織りフードを目深に被っている。


 だが、変化はある。


 彼女の隣にはアマリアが居た。周りには初等部の生徒たちが沢山いる。

 背後にある木の陰から覗き込むようにクーニグンデを始めとした女子生徒たちが敬意や羨望の視線を向けていた。

 正面からは女性生徒を侍らせた自信過剰気味な男子生徒、左右からはプライド五人組がやってきていた。


 その光景を俯瞰しながらエマはロアに向けて呟く。


「遅れてきた青春はとても賑やかなものになりそうですね」



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死神は安楽椅子探偵になれない 栗槙ねも @hollow_nautilus

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