(1)

「自分の名前を言える?」



私の顔を覗き込む様に、問い掛けてきたのは、40歳くらいの白衣を着た男性。



……名前……?



何かを言おうと思うのに、何が言いたいのか分からない。



……名前……?


……私の……?


……それは……?


……何も分からない……



「此処が何処か分かる?」



そんな事を言われても、私の頭の中にある脳は、上手く動いてはくれない。


『此処は病院。そして私は担当医の矢形(やがた)』と言ったのは、白衣を着た男性。


聞いたけど、理解するのに数分かかった。



何故、病院……?


確か……私は……?


……思い出せない。

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黒の蝶 翠恋 桜 @suirensakura

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