第3話 悪魔の子
知らないおじさんのトラックにテレビや布団、必要最低限なものを詰めて田舎へとやって来た。
私たちが住むアパートは手入れをしていないんだろうなと思うほどに周辺に雑草が生え、壁は何十年も張り替えられてなさそうな汚れた壁、部屋に向う階段は通る度にギシギシ音を立てて、何人も通ったら抜けるんじゃないかと思うくらいのボロさ、錆びれた手すり、孤独死が多いと言われている事故物件でボロアパートのワンルームに引っ越してきた。スーパー、コンビニ、遊び場など周りには一切なかった。この条件が揃ってしまってるためか、住人は片手で数えられるくらいしかいなかった。きっと何があってもほぼ助けに来てくれることはないであろう。
「お腹すいたぁ…パパ…」
3歳とは思えない程にやせ細った女の子が、か細く小さい声で発したはずなのに、その声は部屋中に虚しく響いた。
父は娘を1人で育てなければならないと言うのに引っ越しても、父のすることは変わらなかった。ギャンブルで使う資金のための日雇いや犯罪寸前なのかそうなのかのグレーな仕事、飲み歩きで家にいる時間が少なく、家はほぼ寝るためだけの役割だった。まるで私は存在しないみたいに。
引っ越してからの食生活は、パチンコ屋さんの景品でもらってきたであろううまい棒を1日1本だけ与えられていた。
父の上機嫌の時は1日3本。異常なほどに機嫌が悪い時は、うまい棒ですらなしの時もある。それに対し父は、酒とつまみが基本。大金が入ったのであろう日は、いつもの食事より豪華なご馳走が並べられ、お酒を飲んでいた。そんな姿を横目で見ていた私はうまい棒だけでは足りるはずがなかったので、水道水で満たしたり、我慢出来ない時は父が潰れて寝ている隙にこっそり、残ったご飯を食べてたりしている時もあった。こっそりとは言えど、バレることもざらにあったのでその度に、
「お前に食わせるご飯なんてねぇんだよ。10円の菓子で充分だろ。寧ろ、家に居させてもらって菓子を与えられてるだけでも感謝しろ」
と、私の髪の毛を引っ張りながら、足や拳で蹴飛し、日頃のストレスを発散するかのように殴られ続けていた。そして暴言も吐かれていた。
"誰でもいいからどこかへ私を連れてってほしい、 助けて欲しい"
そんな言葉なんか届くはずもなく、そんな毎日を過ごしていた私は、身体は痣だらけ、やせ細り、ほぼ骨しかないのでは。ってくらい誰がどう見ても不健康な体になっていた。精神的にも限界を超えて、幼稚園に通って楽しく遊んだりしている普通の子供とは正反対に、もう既に生きる希望もない、絶望が滲みでていた。
この頃の私に似合う言葉があるなら
『なんて不平等な世の中なんだ』
そんな私だったが、一つだけ現実逃避できるものがあった。
もう一度 夜空 @blueskysora
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