第3話 グノーシス

うーむ、生活か……。

 俺は本日、生活指導が入ることになった。

 あまりにも、部屋が汚いらしい。

 まあ、確かにゴミ箱へ行くものが床に散らばっているけど。

 はあー、めんどくせ。

 散らばった部屋こそが真理なのに。

 まあ、いいや、所謂常識なる奇っ怪な派閥が浮き立つこの世の中は硬直化した、理念がそこらに散らばっている。

 おーそうか、この散らばった部屋や硬直化した散らばった理念の象徴なのだと、言ったところで、相手にはされないわな。

 部屋を掃除することにどれだけの意味があると云うのだ。

 物の空間的位置を変更する行為に何の意味が、それより精神を高める大いなる作業の方が重要では?

 これはめんどくさいとかそう言う、アレではなく純粋理性批判からの帰結であり……。まあ、このようなことを言ってもむなしくなるだけだ。

 とにかく、部屋の掃除は断固として拒否する!

 はあーとにかく部屋を片付けないと文句を言われる。

 もし、俺が精神存在ならばこのようなことにはならないはず。

 なぜ、人は悪なる物資を基礎に生まれたのですか?

 エロイ・エロイ・ラマ・サバクタニ神よ、神よ、なせ私を捨てたのですか?

 これじゃあキリストに失礼かな。

 ちなみにエロいのエロはギリシア語の恋を意味するエロースから来ている。そもそもギリシア語はインド・ヨーロッパ語族。エロイ……以下略はセム語族。つまりは言葉の仲間が全く違うので関係はない。

 語族とは、何か?……さあ。

 とにかく、部屋の掃除をしたことにして。

 高貴なる読書タイムだ。

 今日は何を読もうか?

 うーむ、古典的なジャン・ボードリアールの『消費社会と神話と構造』でも格調高く読むか。

 …………。

 わかったようなわからんような。

 なんか、おしゃれな装丁と安い価格で買ったが積読の目録の一冊。

 やはりここは納富信留の『ギリシア哲学史』でも。

 いや、リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』は

 はあー読書に身が入らん。

 ネットでもダラダラみて時間潰そ。

 時間。その存在はあまりにも残酷。見目麗しい美少女もただの老女に成り果て。人に退屈という拷問を与える。

 恐ろしき、時間よ。

 私は物資にまとわりつく時間という影から逃れたい!

 まあ、高級なことを言っても、その実、たいした高級ではないのが内実なのでは?

 その質問に対して俺は

 苦笑いで返そうと思う。

 うーむ、音楽はYouTuberでタダで手に入る時代になったのだ。

 音楽鑑賞はコスパ最強の趣味に格上げされたのだ。

 Twitterは……相変わらず無反応。

 いいねもリツイートもリプライもない。

 でも、まあ、インターネットでトラブルになるよりマシか……。

 インフルエンサーになりてぇ。適当ツイートするだけで金が転がり込んでくる人生に。

 まあ、俺は金の悪魔マモンに魂は渡さない!

 俺の魂は、いくらかは……多分たいした値段はつかないが、とにかく俺は拝金主義に異を唱えるためにニートになっとのであって……。

 だから部屋の掃除なる世俗的な価値観に基づくイデオロギーには屈しない!

 これは反物質宣言である。

 

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病める者はいかにして終わりなき日常を生きるのか? 坂西警護 @tarantulata2

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