第3話 追跡と不安
煙が晴れるとそこには、一刺し指に何やら紫色の光をまとって、空中にその光で何か文字を書いてる様にしているキアラだった。
「力の根源を読み解き、我を彼の元へと導け」
キアラがそう口ずさむと、紫の光が2つに分かれ、道を指し示すように伸びて行った。
一つは目の前にいるセリアに、そしてもう一つは、キアラが先ほど通ってきた方向へと指示していた。
「う~ん・・・困ったわねぇ」
「あの、これはいったい。そ、それと大丈夫なのですか?私思いっきり」
「え、ああ、ごめんね、私は大丈夫よ。問題はそこじゃないのよねぇ。居場所は分かったのよ、旦那さんの」
キアラがそういうと、セリアの目の色が変わり、身を乗り出し、顔を近づけ、どこですかと聞いてくる。
気持ちは分かるのだがと思いつつ、キアラはとりあえずセリアを落ち着かせる。
「まぁ、まぁ。とりあえずどこにいるかも正確な位置もわかりましたからそう焦らずに」
「で、でも!」
今にも旦那さんの元へ飛んでいきそうな勢いではあるが、まだ居場所も言っていないので、とりあえずなだめ落ち着かせながら、少し冷めてしまった紅茶を味わう。
「あ、あれ、その紅茶どうして?」
「派手な音と爆風もはあるだろうと思ったので、少し魔法で保護したんですよ。せっかく入れていただきましたし」
キアラはそう言ってセリアに笑顔を向けながら少し考えた後、わきに置いてあった錫杖を手に取る。
「リンちゃん。出てきて」
錫杖に向かいそういうと、問いかけると、赤い光が飛び出し、淡い光とともにみるみる人の形をとる。
光はキアラの座っていたソファーの横で形を成す。
そこには要旨が17ぐらいの少女で、フレアスカートに、赤いカーディガンを身に着け、その下は白を基調としたシャツを着た、どこにでもいるような村娘のような女の子がそこに居た。
唯一、その額には複雑な文様が描かれていることが彼女を強調し、それと同時に彼女が人ではないという事を物語っていた。
「何ですかキーちゃん」
「ちゃんはよしてくださいと何度も・・・」
「用件は?」
キアラの言葉を遮るようにリンと言われた少女は、静かだけど無駄な言葉は許さないというような声音で言う。
「出かけたいんだけど。ここに転移用の緊急回避の魔方陣の構築をお願いできない?」
「また厄介そうなことに首を突っ込んでるんですか」
明らかに呆れたように言うリンに、キアラはお願いと言って手を合わせ頭を下げた。
眉一つ動かすことなく、ただじっと見つめるリンが、ちらりと視線を向かいに居たセリアに視線を向ける。
「彼女一人では厳しそう。もしくは彼女も守れという事ですか?」
「ちょっとヤバいかもしれないの、下手すると彼女にも影響が出そうなのよ」
「そこの方は眷属か何かですね・・・・という事は、本体のヴァンパイやか吸血鬼あたりが操られたか何かしているかもしれないと?」
「リン。言い方に気を付けて。彼女の旦那さんが行方不明で、彼女は望んで眷属になった人なの!」
リンと言われた少女の言い方が悪かったのか、キリアはそう言い、リンを強くにらみつけながら声を荒げる。
「申し訳ありません。人の事情に鈍感で。あな・・セリアさんも、不快になる言い方をしてしまい申し訳ありませんでした。他意はなく、ありのままを言っただけでしたが。すみません」
うまく言葉が出てこないのか、リンはそう言ってセリアに頭を下げた。
「そ、そんな、気にしないでください」
「非礼は行動にて返させていただきます。あなたを全力でお守りいたしましょう」
「あ、あのさきほどからいったい何の話なのですか?」
勝手に話が進み、キアラがどんどんリンと話を進めてしまうため、完全に蚊帳の外だったセリアだったので説明を求めた。
「旦那さんルシアはおそらく村居ます。ですが、普通の状態じゃないか、何らかの方法で囚われている可能性があります」
「ど、どうし・・・て」
色々思う所はあるのだろう。
姉であるミィリアからも、ルシアとセリアが添い遂げる際、村の人たちから様々な反対や嫌がらせなどがあったと聞く、何かされたり、利用されたりしていても不思議ではない。
「それと、私が感じている違和感が杞憂じゃないなら、ここにリアを置く事や、脱出用の魔方陣を作ってもらうのは必須だと思います」
「それだけ、危険という事ですか?」
「それは何とも言えませんが、妙な気持ち悪さというか。うまく言えませんが私の感覚が間違ってなければ、まず間違いなくろくな事にはならないと思います」
キアラはそういう、ゆっくりと出口へ向かい、扉近くで一度立ち止まるとセリアへ振り向いた。
「その魔方陣ですが、私だけでなく、村の人の脱出にも使います。けが人や、女子供などが転送されてくると思って準備をお願いします」
「え、あ、はい」
「それと、ヤバくなった私も逃げてくるんで、ここの守りお願いしますね」
「い、嫌な事言わないでくださいよ」
セリアの不安げな表情にキアラはにっこりと微笑はしたものの、最初に村を訪れた時の違和感と、その時に感じた嫌な感じがどうしても彼女の中で、楽勝の問題事、という位置づけにはできないものだったのは、彼女自身が何となく察していた。
言い知れぬなにかに、自然と錫杖を握る手に力が入るが、それを無視して、少し強めにドアを開け、その場を後にするのだった。
白と赤のベール 藤咲 みつき @mituki735
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