マイペースすぎる絵描きの30年

なつちか

第1話 寝れない夜

 寝れない。


 翌日も仕事だというのに寝れないというのはなかなか恐ろしいことのようだが、私にはもっと恐れていることがある。

 

 絵を描くのが嫌いになることだ。

 

 このことを自覚するのは2回目だが、私は絵描きである。

技術のある〈絵師〉と名乗るには、些か力不足だろうがー。

 

私は拘っていた 絵描きであることに

絵が、絵を描くのが好きであることに


 自身のことをもう少し詳しく説明すると、先日30歳の誕生日を迎えたばかりの発達障害を持つ妊婦である。


 私は物心着いた頃から絵を描くのが好きだった。既に幼稚園の時には教員に頼まれ「お店屋さんごっこ」のレストランのメニューのイラストを描いたこともある。


 10歳から20歳の頃までは漫画家を夢見ていた。中学では美術部に入り高校は普通科だが美術系の進路を目指せるところに進んだ。

 そしてその後美術系の短大に進んだが就職先が決まらないまま卒業し、数ヶ月して仕事を得たものの絵からは離れていた。

 

 24歳の時に発達障害がわかった。

否、わかっていた。

周りと自分が違うことに。


小学校の頃はしょっちゅうクラスでいじめに逢い心配した母親に児童相談所に連れて行かれた時、実は発達障害の可能性を指摘されていたらしいが、諸事情あって病院での受診、診断には至らなかった。



 子ども時代の内に私の心は壊れ、死んでしまっていたのかもしれない。


 しかし今私は寝れない。


 嬉しくて。自分が絵描きであると自覚できて。

 30年。生きててよかった。

 

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