第5話 女神と少年 (1)

未来なんて誰にも分からない。もしかしたら今日万札の入ったバッグを拾うかもしれないし、もしかしたら今日か明日、通り魔に刺されて死ぬかもしれない。可能性は全くないとは限らない。未来なんて、僕達人間にはもちろん神様にだって分かりゃしないんだ。


例えば今日、下校中にいきなり自分の目の前に剣が落ちてきた…なんて普通はありえないことも起こるかもしれないわけだから…


うん。皆さんご察しの通り、起きました。たった今。自分の目の前に剣が落ちてきました。落ちてきた剣は深々と道路のアスファルトに突き刺さってる。もしこんなのが頭に落ちてきたらと思うとゾッとするけど、今まさにかなりゾッとしてる。あまりに突然のことすぎて腰を抜かしてしまい、その場から後ずさりしている。それなりに重いバッグを引きずりながら。


人間って、本当に恐怖を感じた時は声が出ないんだな。叫ぶことすらできないよ。

とりあえずこの場から逃げなきゃダメだ離れなきゃダメだそう思ってはいるけど体が動かない。あぁ、学校で普通じゃないことたくさん起きて嫌だったけど、そんなのまだ全然優しいほうだったよ…

制服の汚れとか紐がちぎれたバッグとか関係なく、今はただその場から離れることだけに集中した。逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなk…


「やっと見つけた〜!もぉ〜うこんなところに落ちて〜!どうすんのよパニックにでもなったらもぉ〜」


ついその場から離れることをやめ、見入ってしまった。空から急に女の声が聞こえてきたと思ったら、いきなり女の人が自分がもといた場所に降りてきた。立て続けにありえないことばかり起きる。どうなってんだ今日は。長い緑色の髪、上品な白い服装、空から降りてきたその女の人はまるで…


神様…?


「ん?呼んだ?」


神様に反応したのか女の人は僕の方を向いた。小声で言ったはずなのになんて地獄耳だ。

「あら?人間!?うそん!?えっと…どうしよう…見られちゃった…あの〜、記憶消してもらえる?」


神?がにっこり微笑んで僕に上目遣いで頼んできた。いや無茶言うなや。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モンスターズ・パレード @MIYASITAnobot

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ