疲労感と比例して

 ああんもうん疲れたもおおん

 限界だ!


 折れ曲がった脚を引きずって自宅まで辿り着くと、見たことのない女性が「あらあら……まあ」と私を迎えました。

 髪は伸びていますが、どこか面影があります。

 お前……メスガキなのか……?


「さあタタミさん、入って入って」

 上着を脱がされ、手洗いを促されて座らされました。

「今日は忙しすぎて、お昼のお薬を飲み忘れたでしょ。はい、これ」


 一杯の水と共に、忘れていた薬が渡されます。

 それを飲み込んだら、違和感に口を挟む。

「んぐっ、何故……成体に……?」

 いや、この場合の答えは自分にある。


 何故なら、メスガキはイマジナリー存在であるから。私のコンディションによってメスガキの形態は異なる、ならばこれは、自分の心身がヤバいくらいに限界ってことです。

 ヤバい。


「もう風呂入ったら寝る。だから元に戻ってくれ」

「あらやだ、私は私ですよ」

 魅力的な笑顔。これほどまでに、どこかで私は癒やしを求めていたのか。

「頼むっ、戻ってっ」


「あらあらフフフフフ……ウフフフフ……」

 火星の水先案内人を思わせる曖昧な微笑み。

 だめだ、メスガキ(成体)に全てを委ねてしまいたい。だが、その時が来たら、自分は……。


「まあ、そうですね。今夜はゆっくりお休みするといいでしょう。私も眠ります。限界などというものは、もっと先……いずれ貴方は私に抱きとめられて、沈んでゆくのですよ」

 メスガキ(成体)はそう言い、傍らのグラスの液体を飲みました。


「フフ、美味し……」

 それだけ言い残して、消えました。

 誘惑のままメスガキ(成体)に負け、よわよわ雑魚にされて永遠の眠りにつく所でした。危なかった。


 とにかくまあ、寝た方がいいのは確かです。

 さっさと準備を済ませて、ベッドに入ろう……。

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非実在エッセイ 畳縁(タタミベリ) @flat_nomi

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