最終話 なのに・・・でも・・・だとしても!

わたしの直感は当たり、次の日、元ふとっちょくんは彼女を連れてきた。

ふとっちょくんを、わたし好みに男にしたのは、わたしなのに!!!!!


連れてきた彼女は清掃系女子を装うワンピースを着ていたし、可愛いさレベルもわたしと同レベルだったし、どこかわたしと同ジャンルに属していた。

それが悔しさを倍増させた。


チャリン♪ チャリン♪


元ふとっちょくんと彼女は、500円×2の投げ銭を入れた。

前は100円だったのに。お前らは、しあわせか!


「・・・」


この気持ち、わたしは失恋したらしい。

その気持ちを隠し、ギターを弾きながら2人に軽く会釈をした。


なのに・・・でも・・・だとしても!


暗黒面に堕ちたわたしは、禁断の暗黒曲『地獄へ』を熱唱してしまった。

わたしの楽曲の中で、最低のネガティブ曲だ。

人格を疑われるので、歌う事はあまりない。


その熱唱に、街ゆく人が少しだけ足を止めた。


なのに、しあわせな2人はその熱唱に感動しのか、再び投げ銭を


チャリン♪ チャリン♪


うっ(泣)

いつもとは違い敗北の音に聞こえた。【ななえ】はその夜、敗北した。

真夜中、わたしは1人で帰宅した。


歩道橋の階段を登っている時に、失恋はしたけど、ちょっとした自信を手に入れた事に気づいた。


線路の転轍器(てんてつき)で、列車の行先を替えるように、わたしの歌で彼の人生を替えたのだ。


わたしは、歌で誰かの人生を好転させる事が出来たのだ。

歩道橋の上で、わたしは手に入れた自信に、微笑みを浮かべた。


そして夜空には、満天の星がキラキラと輝いていた。   


             


         完

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少女が禁断の暗黒曲地獄へを歌うに至った訳 五木史人 @ituki-siso

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