二話 水平線は夜動く。
気づいたら昼になっていた。ネットカフェを颯爽と後にした。天気は晴れていた。ただ、いくつかの雲があった。その空模様が心の中を表しているようだった。しかし綺麗だった。
自転車を取って目的地に向かう。百キロ先の港まで行き、船に乗る。船に一日乗って着くという工程だった。調子が良ければ四日程で着く。道中景色のいい場所があるというので寄って行きたいと思っている。
目的地に向かっている道中、町の小さなカメラ屋があった。興味があったので店内に入って見ていると店主に話しかけられた。
「カメラが欲しいのかい」「そうです、実は一ヶ月旅に出ることにしまして」「そうかい、実に面白い話だね。今ならスマートフォンあるんじゃ無いのかい」「スマートフォンの無い世界をしっかりと目に焼き付けたくて売ってきました」「面白いねえ。理由は聞かないでおくよ。ならこのカメラ特別に一万でどうだい?」「こんなにいいカメラいいんですか、是非」「色んな写真を撮ったら見せて欲しいな」「必ずここに帰ってきます」
といい、特別に安く譲ってもらった。人の優しさに触れてとても暖かい気持ちになった。いい写真をいっぱい撮って見せるんだ。そう決めてまた自転車を走らせる。
とにかく自転車を走らせた。走らせては寝るためにネカフェ、場所によっては公園のベンチで寝たりした。ホテルに入る程の余裕はない。
道中様々な景色を収めた。
ルールとして起きた時、寝る前の外の景色を収めるということを決めていた。そして、高台に登って日の出や夜景も収めたし、どこにでもあるような公園、商店街の街並み。道中道を訪ねてきたアメリカの方の写真も撮らせてもらった。優しい笑顔だった。
ここに来るまで四日も消費してしまった。後は船に乗って向かうだけである。ちゃんとした睡眠が取れるのは久しぶりである。だがしかし、船酔いをしてしまい落ち着かなかった。とりあえず水を沢山飲んだ。
そしてCDプレイヤーを取り出す。音楽を聴いけば少しは落ち着くはずだ。ただ、旅に対する高揚感がかなりあった。
cinema staff / 水平線は夜動く
嫌でも陽は昇る 佐薙縋 @kyomukyomu_000
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