カノジョの学校

 ぴーちゃんことP2015はVR空間グリモワールの一角にある工事現場の前に立っていた。

 工事現場といっても実際に工事が行われているわけではない。

 運営会社のエンジニアたち――AI含む――が一生懸命作り込んでいるのだ。


「学校……」


 ぽつりと彼女が呟く。


「開校いつなんですかね?」


 隣に立つ探偵少女ニコが言った。


「ワタシも通えるんですよね?」

「らしいですね」


 この一帯は学園都市として開発されていて、リアルの方に肉体がないAIアバターとも学生・あるいは教師として在籍できるという。


「ぴーちゃんは学生になりたいんですよね?」

「はい、先生というガラではないですね」

「知識としてはそこらの教師よりもありそうですけどね」

「でもこの格好ですから」


 ぴーちゃんは自身の服装――セーラー服を指して言った。


「んー、その恰好で通うんですか?」

「そのつもりですけど」

「ぴーちゃん、ここは大学になるんですよ。セーラー服は制服なので大学に着てくる人あんまりいないと思いますけど……と思ったんですけど、ここVRですし、よく考えたらうちの大学にセーラー服着てくる教授とかいました。たぶん、そんなに変でもないです」

「教授の方なんですか?」

「えぇ。なんかの研究らしいです」

「そんな研究があるんですか」

「なんでもあるんですよ。たしか周囲の視線がどうとか、認知がどうとかっていうのだって聞きました。私は国文学なのでよく知らないんですが」


 ぴーちゃんは莞爾と微笑む。どんな話でも学校の話は楽しいのだと。


「ぴーちゃんはどんな勉強がしたいんですか?」

「本心を言えば、学校に通うこと自体が目的なので学生生活を送ることができるだけで満足なんです。でも、いつかやりたいことがあります」

「なんですか?」

「現実世界でもふつうの人間みたいに生活できるようなワタシの身体……ロボットを作りたいです。そんな勉強をするのが夢です。ネット上の情報を取得するだけではそういう専門的な研究はできませんから」

「素敵な夢です」

「もし現実世界でもお友達になってくださいね」

「もちろんです」

「お茶が飲めるロボットにするので、お洒落なカフェに行きましょう」

「えぇ」

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探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 和田正雪 @shosetsu

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