似たもの同士
西園寺凛と築地あさひは荷物が運び込まれた防音マンションの部屋のソファに並んで座っている。
「やっと片付いたね」
「ですねー、つかれたー」
二人は色々と物件を見てまわったが、賃貸であまり良いところを見つけることができなかった。
すると、ファミリータイプの3LDKを雀姫こと築地あさひは一括購入しただけではなく、防音工事をし、機材類もすべてレンタルではなく購入して業者に設置してもらったのだ。
「でも、高かったんじゃないですかー? ここ」
「いいのいいの。わたしの家にもなるわけだし」
そう、ホテル暮らしをしていたあさひは自分の住居も兼ねて購入したのだ。
リビングは麻雀卓、ポーカーテーブルにソファが置かれ、壁にはスクリーン、天井には小さなシャンデリアも吊ってあり、まるでカジノだ。
そして一室は編集などの作業用の部屋、一室はギャンブルと関係ない配信もできるVR専用部屋、そしてもう一室があさひの私室だった。
「わたし、ここに住みはするんだけど、別に友達とか連れてきてもいいからね」
「友達、ですかー。あたし、友達ってTJとマッキーしかいないんで連れてきたとしても、あさひさんの友達でもあるって感じになっちゃいますねー」
「リンちゃん、友達少ないの? そんなザ・陽キャって感じなのに?」
あさひは凛が冗談を言ったり、からかったりしているのではないかと、彼女の顔をまじまじと見つめる。
「マジなんですよー。あたし、ギャル文化は好きなんですけど、趣味が恋愛小説書くことだったりしてですねー、そういう趣味のコミュニティでうまく馴染めないんで。で、ゴリゴリのギャルにもまた混ざれないんですよね。ギャルファッションが好きなのであって、中身は文学少女なんで」
「へー、うまくいかないもんだね」
「あさひさんはお友達ってどういう人が多いんですか?」
そういえば、友達らしい友達というのは大学時代を最後に作っていなかったことに気づく。
ギャンブルの世界に身を置いてきたし、海外のカジノを転々としてきて、決まった住所があるのも久々なのだ。
一応、戸籍自体は実家にしてあったが、ホテルのスイートルームに荷物を置いて寝食の間を惜しんで博打三昧だった。
そして、藤堂ニコとリンの二人に敗北するまで、ライバルと呼べる相手すらいなかったのだ。友達なんていない。
「わたしの友達はねー、今のところリンちゃんとTJとマッキーだけだよ」
逡巡した後、あさひはこう言った。
「なんだ、あたしと一緒じゃないですかー」
「似たもの同士だったね、わたしたち」
「でも、好きな人は一緒ってのはやめてくださいよ」
「大丈夫だよ。あたしは男の人が好きだから。でも藍ちゃんだっけ? 今度紹介してよ」
「えー」リンは少し嫌そうな顔をする。
「いや、そこは信用しなさいよ」
「冗談ですよ。今度連れてきますね」
「うんうん、じゃあせっかくだし、わたし何か料理でも作って歓迎しようかな」
「料理できるんですか?」
「やったことないけど、できるっしょ」
「いやー、どうですかねー。外で食べましょう」
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