リアルでも占い師

「あぁ、光が見えます。この調子で予備校にきちんと通い、真面目に予習復習に取り組めばきっと志望校に合格できるでしょう」

「ありがとうございます! 私、先生の占い信じます!」

「はい、信じることが大事なのです」


 そう言うと同時に砂時計の砂がすべて下に落ちる。


「では、時間になりましたのでここまでです。また何か相談したいことがあればいつでも来てくださいね」

「はい、また道に迷ったらよろしくお願いします」

「えぇ、もちろん。でも次に来るのはきっと合格報告の時で、その次は大学での恋愛相談になるでしょう」

「えー、本当ですか?」

「信じることが大事ですよ。あと、はい、これ。Vtuberもやってますから。お店に来られないけど、ちょっとした星座占いとかのコンテンツが観たい時はこっちで見てくださいね」


 そういって、元・千里眼オロチ、現・神宮ミコこと本名・浦井みやこ(24)は、巫女服美少女VtuberのイラストとQRコードが記載されたチラシを少女に手渡し、見送った。

 そしてこう思った。


 —―占いか? これ?


 占いの結果をそのまま伝えることが良い占い師ではないし、彼女はきっと志望校合格するだろう。

 なんなら志望校よりもう1ランク上の大学も狙えると思っている。

 これは占いではない。少し話しただけだが、彼女の話の組み立て方や論理的思考から聡明であることはすぐにわかった。

 ただ不安解消のために占い師に頼ったのであれば、その不安を解消してやればいい。きっと彼女はやるべきことをやる。そして今後定期的に通う固定客になってくれてもいいし、スパチャを投げてくれる太客になってくれてもいい。

 占いの結果は受かるかもしれないし、落ちるかもしれない、というものだった。そんなものを伝える意味などない。

 なんだか、最近特に藤堂ニコちゃんの影響を受けて、占い結果よりも人間観察からの助言のウェイトが大きくなってきている。


 どうやら客は途絶えたようだ。


「帰ろ」


 みやこは水晶やカードといった占い道具を片付けると、小さなテナントを後にする。

 もともとは横浜中華街にある占い屋でバイトをしていたのだが、Vtuberになってからまとまった金銭を手にすることができたので独立して、ショッピングモールの一角を借りたのだ。

 企業に就職して働くというのは性に合っていないように思えた。


 VRバブルの今のうちに少しでも蓄えを作るため、帰ったら遠方のお客さんのための占い生配信をやり、来週分の星座占いの原稿を書く必要がある。

 詐欺をやっていた時より、収入は確かに減った。

 それでも毎日が充実している気はした。


 ショッピングモールの外に出ると綺麗な月が出ていた。


「月占いによると……明日は晴れですね」

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