第2話オマエ、ウチの部活向いてねーよ。
部活紹介で衝撃を受けた私は、吹奏楽部と音楽研究会の二つの部活を見学することにした。
フルートの先輩に一目惚れしたが、それだけで吹奏楽コンクールへの目標を捨て去ることはできなかったからだ。
吹奏楽部を先に訪れた。
フルートパートに行くと、私は中学の時の先輩から歓待される。即戦力だからと背中を押されるように紹介されて私は恐縮する。
私は先輩に気になっていたことをたずねる。
「先輩、音楽研究会ってアレなんなんです?」
「ああ、吹コン出たくないっていう、お遊びの連中。関わらないほうがいいよ、下手くそだし」
先輩は苦笑いする。
少なくともフルートは、私が聴いた中で一番上手だったけれどそれは先輩を否定するようで言えなかった。
パート練習を見学したあとで、音楽室で合奏を見学する。流石は強豪校だった。
高杉と名乗った顧問の先生への返事はびたりとそろっているし、椅子の座り方も楽器を吹く姿勢も整っている。
全ての奏者の目線がしっかりと顧問の指揮に注がれていた。
その姿はまさに吹奏楽強豪校の姿そのものだ。弱小吹奏楽部とは規律からなにからまるで違う。私は演奏だけでなく部員たちの姿勢に改めて感動し、コンクールの情熱をたぎらせた。
その次の日、私は一応確認しておこうと思って音楽研究会の練習する教室を訪れた。吹奏楽部の練習する教室から離れた、一階の一番隅っこの教室だった。
音楽研究会の6人は私が訪れると、一瞥してからまるで対応を押しつけるようにサックスを首から下げた女の先輩に促した。
「見学?」ストレートの黒髪がきれいな先輩が私に聞く。可愛いというより美人の先輩だ。
「そうですけど、、、」
「よろしく。わたし、イズミ。経験者?」
「はい。フルートです」
「そっか。じゃあ私じゃなくて、ユズ」
イズミ先輩がフルートのイケメンの先輩に呼びかける。面倒くさそうに立ち上がると私に「3年の立川弓弦(ユズル)」と名乗った。
立川先輩は私を怪しむように目を細めている。
「中学は?」とだけ尋ねる。
「s中学です」
「あっそ。吹コン目指すんなら吹奏楽部に入れよ。練習室は上の階だから。」
「ユズ、ちゃんと対応しなさいよ!」イズミ先輩が立川先輩を肘で小突く。
先輩は露骨に嫌そうな顔をして眉間にシワを寄せる。
「いや、絶対コンクール大好き人間だろ。そんな顔してるじゃん。なぁ?」
問いかけられて「そうですけど」と嫌悪感丸出しで返す。
「オマエ、ウチの部活向いてねーよ」
先輩は私にはっきりとそう告げた。
響かないよ、フルート!? ~吹コン?なにそれ、食べられるの?〜 @hiwada55
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