第16話 魔術結界

 素振りをする。袈裟切りから始まり、逆袈裟、横薙ぎ、突き、回転斬りと順に繰り返した。転移時に技能が何故か付与されているので体の調子は非常に良い。どのように腕を振るえば最も効率よく斬れるのかがよくわかる。


 しばらく続けていると体が温まってきたのを感じ、一旦休憩することにした。訓練場の端に置いておいたタオルを取りに行き汗を拭く。


 ふと視線を感じると、そこには奇抜な髪型をしている男、ルーサが立っていた。


 彼は色彩の魔導士と呼ばれ、様々な色の髪をしているのが特徴だ。


「よぉ!カズミ、聞いたぞ。テロリストと殺し合うんだってなぁ。」

 ルーサはそう言ってニヤリと笑った。


「あぁ、そういうことになったらしいな。」


「おいおい、他人ごとみたいに言うなよな。お前も戦うんだろ?」


「もちろんだ。そうじゃなきゃ殺されに行くようなものだしな。」


「はっはー、相変わらず真面目なこって。そういやエリオンの野郎まだ魔術障壁も教えてないんだろ。せっかくだし教えてやるよ。」


「まじか!?助かるぜ!!」


 俺は攻撃用の魔法は覚えたが防御の方法は未だに手探り状態だ。

 そこでこの申し出は願ったり叶ったりだった。

 それから、ルーサから教わること5時間、ようやく障壁を張ることに成功した。


 魔術障壁というのは系統化されている魔術だ。

 過去の分類なので意味はないが、無属性魔法の一つとなっている。


 魔術障壁と名付けられてはいるが個人的には布みたいなイメージだ。


 魔力を中和する布を上から被さると例えればわかりやすいだろう。また、この布は重ね着することで強度が増すのだ。


 もちろん何枚も着るのは上から着るのに繊細な魔法制御が必要になり難しい。


 他の欠点としては自身の周囲にしか張れないことと発動までに時間がかかってしまうことだ。


 また一時的に魔力の絶対量も減少するので障壁を消費しないことが必要だ


 基本的に掛け続ける魔法なので発動までに時間がかかるのは問題ない。

 

 魔術障壁にはランクが1から6段階まで存在し数字が上がるごとに防御力は上がるが、消費する魔力量も増えてしまう。


 つまり強力な障壁を何枚か張るのが合理的とされている。


「どうだ?上手くできたか?」

 俺は不安げに尋ねた。ランク3の魔法を3枚張る事に成功した


「完璧だ、文句なしの出来栄えだ。お前さんはセンスがあるな。これならすぐに実戦でも使えるようになるだろう。」


 俺はホッとした。これでとりあえずは命の危機は回避できる。


「だが二級魔導士の戦いじゃ基本的にランク4を6枚ほど張らないと厳しいだろうな」


「そうなのか……」


「あぁ、そうだ。だからお前にはもっと繊細な魔力を使えるようになって貰わないとな」


「あぁ、頑張るよ。ところで、ルーサはなんの魔法が得意なんだ?」


「俺は詠唱で色を指定して使うことが多いから色彩の魔導士なんて呼ばれてるんだ。恥ずかしいがな」


「色彩……なるほどね。ちなみにどんな魔法を使うんだ?」


「あぁ、例えばこんな感じだな。透き通った白は空をも焼き尽くす」


 灼熱が生まれ、一瞬で消える。背筋に対照的な冷たさが走る


「あぁ、これは俺の割と最強レベルの魔術だな。ランク6の魔術障壁を破壊できるぞ」


「えぇ!?」


「ま、お前もいずれできるようになるさ。」

 ルーサはそう言って笑った。


「一級魔導士になるにはランク6の障壁が張れることが最低ラインだ。他にもいくつか条件があるがな。障壁とか結界ならガインが一番だから聞いてみるといいぜ。よし!それじゃ、オレもそろそろいくわ。またな!」


「おう!」


 ルーサを見送る。しかしルーサは凄いな。あんな魔術を使えたらかなり心強い。


 さて、これからどうするか……。


 取り敢えず身体強化を発動させて素振りを再開するか


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【作者からの一言】

魔術障壁の設定わかりにくくて非常に申し訳ございません。

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異世界でも勉強って、ツラくね? ~剣と魔法のファンタジー世界に転移しましたが強くなるには勉強が必要なようです~ ウミウシは良いぞ @elysia

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