初恋とNew lover
ベネディクト
第1話
「元気でね、篠崎君。」
そう微笑み手を振る少女、森川花。あの時の表情をまだ鮮明に覚えている。
それは小学校の卒業式が終わり、お互いの卒業アルバムの寄せ書きを書いた後だった。彼女はサッと友達の所へ行ってしまったが、僕は彼女が視界から映らなくなるまで見つめていた。初恋である。彼女をいつから気になりだしたかは分からない、ただ僕に向けられた無邪気な笑顔に甘酸っぱい感情を抱いたのは確かだった。
…言えなかったな、最後になっても。
雲ひとつない空を見上げ思う。もう彼女とは会えない、もし再会しても忘れられている。自分の臆病さを嘆いた。ただ一言、ただ一言、言えば晴れる言葉。胸の中に秘めていた言葉。それが、なぜ、、。
家への帰路の途中手をぎゅっと強く握りしめた。
…なんで言えないんだよ、、。
彼女にはもう会えない。この心の蟠りは綺麗さっぱり消さなくてはいけない。忘れよう、忘れるんだ。そうしたら楽になる、何もかも。忘れて前を向いていこう。中学を楽しんでいこう。地元の友達にとは別れてしまうけど、それでも新しい仲間を作ってそいつらと仲良くすればいい。それで万事解決じゃないか。だから、だから、、忘れ、、。
地面に水滴が落ちる。雨かと思ったが視界が潤んでいた。
あれ?俺なんで泣いてんだよ?もう、前を向いて行こうと思ったのになんで?ああ、やっぱり。そうか、俺は本当にあいつが、、。
裾で涙を吹きまた足を歩める。桜散る最後の通学路を。
初恋とNew lover ベネディクト @daharama
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