第4話 最後の日

 Aちゃんは、その頃絶好調だった。


 クラスに彼氏ができた。

 彼はクラスで二番目に人気の男子で、サッカー部のイケメンだった。

 実はBちゃんもその子のことが好きだったのだ・・・前からAちゃんに話していたけど、最近はほとんど喋っていないから、Aちゃんはもう遠慮しなくていいやと思ったんだろう。Bちゃんはこの男子とほとんど喋ったこともない。こういう状況で、Aちゃんがその子を取ったと言ったらおかしいだろう。


 さらに、Aちゃんは買い物しているところをスカウトされて、芸能事務所に所属することになった。特に仕事はしてないけど、それでも学校で話題になった。


 その一方で、Bちゃんはだんだんクラスで孤立するようになっていた。ほとんどの子は、BちゃんがAちゃんの友達だから仲良くしてくれていたんだ。


 運命の時は、いつもと同じような昼休みだった。

 教室には半分くらいの生徒がいたそうだ。

 Aちゃんはトイレに行って戻ってきたばかりで、たまたま一人だった。大体誰かと一緒だから珍しかった。机の中を覗いて、次の授業の準備をしていた。


 Bちゃんは手提げカバンを持って、Aちゃんにこっそり近づいて行った。

「いまだ!」 

 Aちゃんが腰を曲げて机の中を覗いた瞬間。

 Bちゃんはすかさず駆け寄った。そして、カバンからさっと包丁を取り出した。

「キャー!!!」

 それに気が付いた女子生徒が悲鳴を上げた。


 Bちゃんが包丁でAちゃんの首をぐさりと刺した。

 一瞬だった。

 Aちゃんはびっくりしたまま首を抑えていた。


 動脈を切ってしまい、どくどくと血があふれた。

 机はの上のテキストは血まみれだった。

 みんな「キャー」、「キャー」と悲鳴を上げて教室から逃げ出して、階段を下りて外まで走った。

「Aちゃんが、刺された!」

 その階の生徒みんなが逃げた。


 しばらくして、警察が教室を覗いてみたら、傍らにBちゃんが呆然と立っていたらしい。包丁はAちゃんの首に刺さったままだった。


 Bちゃんは、親が厳しいせいでストレスを溜めていて、さらに学校も楽しくなくなって追い詰められていたようだ。Aちゃんを刺した理由は、見ていてむかつくからだったそう。


『目立たなかったらよかったのに・・・』

 

 みんなそう思ったけど、周りが騒いでいただけで、Aちゃんはごく普通の子だったらしい。ファンクラブなんか作らなかったらよかったのに・・・。俺はそう思う。

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