第6話 さよなら

 卒業式の後、三人は昔よく遊んだ公園で理沙のお別れ会をしていた。

 「あたし、明日東京へ出発するんだ」

 理沙の目元は赤くなっていた。

 「理沙、お前だったらすぐに慣れるよ」

 亮が軽い感じで言った。

 陸は黙っていた。なぜか、緊張して理沙のことを直視することができなかった。思考がうまくできず、頭の中が真っ白になっていた。

 なんとか「理沙…がんばって…」と言えた。

 「うん!がんばる!」

 理沙は軽くガッツポーズした。でもどこかぎこちないガッツポーズだった。

 「えっとね…えっと…」

 突然、理沙がたどたどしく話しだした。

 理沙は手も胸の前でもじもじさせた。

 陸は微動だにせず、黙ったままだ。

 「えっとね…陸。なんかごめんなさい。あたし陸がいじめられていたの助けずに見ているだけでした。幼馴染なのに。本当にごめんなさい」

 「俺もごめんなさい」

 亮も言った。

 陸はその言葉だけで十分だった。陸はもう誰も恨んでいない。理沙も亮も恨んでいない。

 陸は今の理沙の言葉ですべて過去の出来事を水に流すことができた。

 陸は感謝の気持ちを理沙に伝えることにした。

 「理沙…ありがとう。今の理沙の言葉で僕はすべてを許せることができたよ。僕はこの瞬間生まれ変わったよ。すべて理沙のおかげだよ。理沙、本当にありがとう」さっきとは打って変わって上手く言葉にすることができた。

 「そう言ってもらえてうれしいよ。そのことがずっと気になってたんだ」

 理沙は恥ずかしそうに頬を朱に染めた。

 亮はヘラヘラしていた。

 二人の表情を見たとき、陸はこの瞬間を冷凍保存して、いつでも見れるようにしたいと思った。この清々しさを感じれるようにしたいと思った。

 

 亮と理沙。


 二人は間違いなく、陸の幼馴染だ。


 陸は理沙への愛情を最後まで、理沙に打ち明けなかった。


 なぜかそれをしてしまうと、三人の関係が崩れるような気がした。

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好きと言えなくて 久石あまね @amane11

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