第5話 理沙のこと

 「実は理沙のことなんだけど」亮はそこで言葉を区切った。

 亮は深刻そうな顔をした。

 一体何なんだよ。理沙に何があったんだよ。陸は理沙に何があったか知りたく、亮の顔をまじまじと見つめた。

 「理沙、援助交際して妊娠したんだ。相手は50代のおっさんらしいよ」亮は深刻そうに言った。

 「えっ嘘だろ?」陸は亮の発した言葉の意味を理解できず、口を鯉のようにパクパクと動かした。「え?え?え?なんだよそれ!お前ふざけんなよ。理沙は一体どうしたんだよ!あんなに清純だったのにっ!」陸は気が狂ったように叫び、亮に己の何とも形容しがたい怒りの感情をぶつけた。そして「アァーー」と腹の底から叫んだ。その時、陸は一瞬頭の中で、今の叫び声を聞いて、2階から母が降りてくるのではないかと思った。

 亮は相変わらず深刻そうな表情をしたままだ。

 それから5分ぐらい二人は黙ったままだった。

 すると亮はおもむろに言った。 

 「陸、実はな、今の嘘なんだ」

 亮はニヤニヤ笑いだした。 

 陸はそれを聞き、また理解が追いつかず、今度は床に突っ伏した。

 「お前マジでふざけんなよぉっ!びっくりしただろ!心臓に悪いだろ!」陸はまた叫んだ。

 「なーんだ陸、元気そうじゃん。学校行こーぜ」亮は軽い感じで言った。 

 陸はサンドイッチを食べ終え、亮と学校に向かった。

 

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