Someone

@Tubuan2000

第1話 何者。

激しい雨の夜だった。薄暗い灯りのバーで酒を飲む男がいた。

見るからに汚らしい格好で、行くあてが無いようだ。

店内には、彼のの向かい側でグラスを拭くマスターがいる。

アスファルトを叩きつける雨の音だけが、店内を覆っていた。

その音を掻き消すかのようにマスターが言う。

「お客さん、お見かけしない方ですね。住まいはこちらに?」

男は黙ったままだ。

勘の良いマスターは分かった。なんせ、30年以上もバーを経営しているのだ。

様々な客の悩みを聞き、アドバイスをした。

多分、彼は仕事を失い、頼るアテもないからこうして一人で飲んでいるのだろう、と。こういう客の場合は、まずは自分の話をして、心を開かせるのが大切なのだ。


マスターは一言、言った。

「今日のような雨の日になると、いつも思い出すことがあるんですよ。もう昔の話だが、聞いてくれませんか?」


男は表情を変えずに、マスターの顔を見た。一瞬の沈黙の後、

「聞く。」

と低い声で発した。


マスターはまるで、彼がそう答えると分かっていたようだった。

「ありがとうございます。じゃあ早速話し始めますね。私が大学生の頃の話です。。。。」


マスターの話が始まった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Someone @Tubuan2000

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ