第3話 魔法

生産職になると宣言してからというもの、ダヴィンズさんは絶対に戦闘職になるべきだとごねていた。


「カナメは大成するかどうかはわからないが魔法操作という面では確実に戦闘職になるべきだ。俺には偏見がないからいいが、街には人間の生産職と言うだけで散々なことを言ってくる輩がわんさかいる。さっき会ったばっかだが俺はお前のことを心配してんだ」


「それなりのものを作れば認めてもらえるんでしょう?」


「それなりといってもただに一般人に売れたらいいってもんじゃない。今までとは違う技術での生産を考えているならギルドに登録するだけでも大変だって言うのに、その上都市の管理をしてるような大貴族や国王に認めてもらわなきゃいけないんだぞ!簡単なことじゃない!」


「僕ならできます。僕だけの力とは言いませんけど」


そう言い切るともう言うことはないとでもいうように大きなため息をついた。


「少しなら協力してられるかも知れん。ただ俺も商人だ。大がかりな仕事はそれなりの金を要求するからな」


「もちろんです」


「勝算がおありで?」


ニコニコした様子でイーサンさんが問いかけてくる。


「簡易版 秘伝のナイフとやらを作ってみようかと。時間はかかりますけどね」


「ほう!それが出来ればうれしいものですね。魔法操作の不得意な人でも様々なものが出来る」


「そうです!先ほど言った剥ぎ取りだけじゃありません。木工、料理、パドリング(薪割り)、火起こしの用意、細かな作業が魔法自体が得意でない方でも、魔法操作の不得意な方も、魔法量が少なくて少しでもいいから節約したい方も誰でも出来るようになるんです」


「それが出来ればいいんだろうけどよ、そう簡単にうまくいくとは思わないぜ?」


とダヴィンズさんが問いかけて言う。


「そこでダヴィンズさんにお願いがあるんですけど、魔法金属以外で色がついてるような金属の入っていそうな鉱石の入手方法って分かりますか?」


「金属なんて手に入れてどうする加工技術だなんてわかんないぞ」


「そこは僕の腕の見せ所ですよ」


「観賞用に使われる色石と呼ばれるもの以外は鉱山に行けば大体あるだろうよ、もし実現できれば商会にとっても大きなチャンスだろうから、俺のつてで入手してきてやろうか?」


「それはおねがいします!!!大量に!!!!!」


呆れていたところから一変、ブファ!ガハハ!面白いやつだ!と言ってダヴィンズさんは吹き出し、笑い始めた。


「あとはうーん…鉱石に含まれる金属の含有率さえ分かれば、案外うまくいくと思いますよ」


そう笑うとイーサンさんはふふふと笑って答えてくれた。


「それなら簡単じゃないですか、【鑑定】使ったらいいじゃないですか」


【鑑定】魔法!?そんな便利なものがあるのか!


「人間や動物など生き物に使うのはなかなか難しいですが、鉱物や草花の情報を知りたいのであれば【鑑定】が一番ですよ」


「【鑑定】ってかなり誰にでも使えるものなんですか?」


「そういうわけではありません。何事にも鍛錬は必要ですよ。ただ薬師ギルドで必要な薬草類を見つけるために開発されたと言われてますし、ある程度の魔法量があれば出来るのは間違いないです。魔法金属の含有率も【鑑定】で調べますから、多分金属の含有率を知るというのは出来ると思いますよ」


「僕でも使えますかね」


「ホーリーボールが扱えるのなら可能性は十分にありますよ」


「ホーリーボール?」


「聖属性とよばれる種類の魔法です。【鑑定】が開発された時期の薬師ギルドは教会の一部でしたから、多分聖属性に類するものだと思います」


魔法というのは大雑把に分けると火、水、風、地、聖、悪(破)、無の七つに分けることが出来るらしい。悪属性が破属性と別名があるのは世界中に信者のいる創世教という宗教の教会が悪属性と名付けていたんであると弾圧した時代があることの名残だそうだ。一般的には破属性と呼ぶらしい。(創世教の教会では未だに悪属性と呼んでいることがあるんだとか)。


属性によっては得意不得意があるらしく、また種族によっても得意不得意があるらしい。



先ほど僕が使えた魔法は風属性の【ウィンドボール】。


ダヴィンズさんの得意な属性だったため出来なかった場合でも、コツが教えやすいと思って風属性にしてくれたそうだ。


「さっそくやってみてもいいですか?」


「誰もいない方向に向けてどうぞ」


全身から魔力を込めて……【ホーリーボール】!


今度は30mぐらい遠くに飛んで消えていった。


「うーんまぁ、何回も使うと魔力欠乏症になるとは思いますけど使用する分には問題ないとは思いますよ」


「まあそうだな、そうだ!もしあれだったらよ、全属性試してみたらどうだ?」


そう言われて僕は時間はかかりながらも、全ての属性の魔法を使ってみることにした。


結果は

風、水が25mぐらい

聖、破が30mぐらい

無が15mぐらい

そして火、地が45mぐらい飛んだ。


基本的に30mぐらいが戦闘職で鍛えていくための最低ラインらしく、40mクラスでやっと平均らしい。


つまり火と地以外は平均以下のへっぽこ魔法使いらしい。


「お前もしかしてドワーフの子供だったりすんのか?基本的に人間は風、水が得意でドワーフが火、地が得意なんだよ」


「いえ、いたって普通の人間ですけど」


「一応エルフは聖、ダークエルフといって褐色のエルフは破、獣人は無属性が得意とされていますけど何事も例外はつきものですからね」


まるで興味津々の子供のような表情をするイーサンさん。口調も動作も丁寧だけど、どことなく子供らしくて面白い。


ダヴィンズさんはあれだけあった食べ物を全部食べきって三杯目のビールを飲みきったところだった。


「面白いやつだなあ、カナメはよ!!とりあえず食事も終えたことだし、オーランドに向かって出発しようぜ!!」


「「そうしましょうか」」


ダヴィンズさんが声をかけると後ろの方で騒いでいた護衛の人たちも片付けをし始めた。

もちろん僕も片付けを手伝って馬車に乗り込む。


いざ街まで出発!!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦闘職ばかりの世界で生産職は何を願うか? @yuuutu-rei-901

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ