無神経
安達粒紫
マッサージ
私はマッサージ、あるいは按摩、または指圧が出来る。
他の方向から言えば得意と言われている。
今日も祖母に脚のマッサージをした。
いつも通り――――いつも通り好評だった。
そして祖母のマッサージの途中であったが、横で親戚のおばさんが母からマッサージを受けていた。
同じく脚を。
母のマッサージは悪いが見よう見まねで肩にならまだしも、脚となると下手としか言えない。
だが、おばさんは、菩薩の様な心で「気持ちいいねえ」と言っていた。
祖母のマッサージが終わった私は、母と交代して、おばさんのマッサージをさせていただいた。
「流石全然違う」などと言ってくれる。
そのマッサージの最中で雑談的会話が必然的に発生する。
「おばちゃんはね、昔の事故の影響で(むち打ち)脚がしびれてるのよ、つねっても痛くないの」
と言った。
そこでハッとした。
その事故の話も身体のことも、もちろん私は知っていた。
だが、つねっても痛くない脚を得意げにマッサージして、「足の指まで揉んでくれるの粒紫君だけだわ」とか「血行が良くなってきた気する」とか言わせてしまっていたことに、私は自分を恥じた。
結局、私のマッサージが私自身のためのものだったことを思い知った。
帰りに私はおばさんにあやまった。
おばさんは「気持ちよかったのよ」とは言わなかった。
「気を使わないでいいのよ」と言った。
私はまだまだ人の気持ちも考えられないのかと猛省した。
無神経 安達粒紫 @tatararara
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