第16話 裏組織を叩く

ーー  悪政の貴族を斬る



僕は変化の能力が上がっている事に気付いていた。

「これは女神が新たな能力を授けた可能性があるな。」

と思いつつ全鑑定で確認すると。

[任意の姿に変化することが出来る。触れていれば、記憶さえもコピーできる。]

と分かった。

「これは使えそうだ。」

と僕は思った。



            ◇


ここは悪政の噂の高い、トールス=カザミ伯爵と子飼いの男爵家3家。

ここは隣国のグスタング王国と交易が盛んで、裕福にもかかわらず、高い税と無策な悪政で領民が苦しんでいるようだ。


僕は新しい変化の能力を使い調べようと考え。

カザミ伯爵にパーティーに参加した。殆どパーティーに参加しない僕の参加とあって、多くの貴族が参加してきたようだ。


先ずはカザミ伯爵に挨拶をしながら握手で記憶をコピーする。

その後は配下の男爵家は元より、パーティー参加の貴族と握手することでコピーをしてゆく。


記憶をコピーしただけで、かなりの悪事が判明した。

上手いことにそれぞれには、後継がいるようだがその後継もダメなら・・・。


先ずは商人に変化して、グロウ男爵領に向かい村長などの記憶を覗く。

「ここは一部の人間で富を独占しているようだ。」

問題のある人間を1人ずつ殺し、隠した富を回収しながら遺書を書く。

【今までの悪事に良心が耐えられず、女神様が現れ許しをいただいた。】

と書いて死体の横に富の半分を置いた。


このような作業を6件ほど繰り返し、最後に男爵を殺して同じ事をした。


残りの男爵家も同じ事を繰り返すと、カザミ伯爵が慌て出した。

自分と共に富を貪っていた、男爵家らが次々と自害したと聞いたからだ。

「アイツらが自分から死ぬわけがない。誰かが私を狙っているのだ。」

伯爵は命の危険を感じ、警護を厳重にした。


しかし自分に近いもの達が同じように死にだし、恐怖で不眠になった伯爵は、ノイローゼで寝込んでしまった。


それでも不審死は続く、伯爵家の主なものや家族まで亡くなるものが出だした時に。

伯爵は隠居し、後を生き残った三男に譲り姿を消した。


伯爵の三男は、父らの悪政に反対していた息子だった。

死んだ者のそばに遺書と富が置かれている事実に、きっと女神様が罰を与えていると考え。

その後は良政を心掛けた。



このカザミ伯爵領及び傘下の貴族の不審死が、王国内に大きな波紋を起こしていた。




               ◇



ここは王城。

国王が宰相に

「この国に女神様の手が届き出したようだ。王国内にお触れを出せ。」

と指示した内容は

【国王の枕元に女神様が立ちこう言った。不信心な者及び悪心のある者には、神の天罰が降り始めるだろう。】

と。


その後も、悪政の噂の貴族らが次々に不審死を遂げその話は、事実であると認識され始めた。


半年もすると、悪政の領地は代替わりをして問題がかなり小さくなった。

しかし無くなることはない、それが人間だからだ。


その代わり教会への寄付は大幅に増え、孤児院などの経営が楽になったことは良かった。


この仕事は定期的に行おう。



ーー  獣人を狙う商人や貴族。



オムニバス王国から報告が上がり始めた。


獣人らが拐われているようだと言う話だ。

特に子供やエルフ族がねらわれているようで、特定の組織の名前が上がってきた。


それは闇組織「悪意の種」と言うもので、

 「誘拐」「強盗」「暗殺」「闇奴隷商人」

と悪事ならなんでもと言う組織だ。


この組織が、貴族や豪商の依頼で獣人らを拐って売っているようだ。


僕はこの組織の殲滅に動き出した。



             ◇



先ずは奴隷商の特定だ。表では普通の奴隷商として活動しているはず。


貴族として奴隷商に訪れると、当主に面会しその記憶をコピーする。

これで目的の奴隷商が判明、さらに組織の内情もわかった。


奴隷商人党首から手始めに消してゆく。

当然懺悔の遺書を残し、不当な奴隷については解放するという言葉を残し。


次に記憶の中のつなぎの男を探す、3日ほどで飲み屋で見つけた男に接近する。

酒を奢る名目で酔いつぶしてから記憶を探る。

男を路地裏で抹殺し、変化して組織の末端に向かう。


「俺だ。開けろ。」

アジトに入ると、資料を回収し手下を集めさせる。

「重要な問題が起こった。皆を至急集めろ。」

集まった悪党の手下をそのアジトごと燃やす。


次のアジトへ向かい同じことを3日続けると、大半のアジトが消えた。

次は大きな支部だ、この組織は国を超えて広く蔓延っている。


支部の首領に接触しその記憶をコピーすると、意外な事実がわかる。


その後は、拐われた獣人を助け出すと、買い取っていた豪商や貴族らを処刑し、紙を残す。

【我は、獣人の守り神ゲッコウ。神罰を下すものなり。】

と言うものを。


既にこの国では、オムニバス王国にゲッコウと呼ばれる古竜がいることは有名である。古竜はその魔法でありとあらゆることが可能と言い伝えられており、真実性が高まる。


これよりこの国で、獣人を奴隷として手に入れようとする者は激減する。



ーー 他国へ向かう。


今回はゲッコウの名で活動しているため、ゲッコウの背に乗って他国を飛び回る。


すると、各国で古竜目撃の情報と、獣人を不当に拐って売り買いする者が古竜の神罰を受けたとの情報が流れる。


落ち着いていられないのが、大元の「悪意の種」の一味だ。

「ここも危ないかもしれん。サザンクロスの奴らは全滅したようだ。」

本部の首領が幹部を呼び出し伝える。しかしその幹部の中に既にカムイが変化して潜り込んでいた。


幹部を含め殆どの者がここに揃っている。


僕は結界魔法を発動しこのアジトごと隔離する。

そして皆を見ながら変化を解き

「これからお前達に神罰を下す。」

と前置きし闇魔法で捕縛すると1人ずつ殺してゆく。


「待ってくれ。もう組織は解散して真っ当に生きるから。」

1人の幹部がそう叫んだ。

「聞こえないな。女神にはそんな嘘は通じないのが分からないようだ。」

と言いながらその男を殺すと、別の男が

「私は何もしていない。ただの幹部なだけだ。」

と言い逃れをしだす。

「女神に会うことができればそう言うんだな。」

と答えて殺すと。

何を言っても助からないとわかった幹部達は泣き喚き始めるが、その声を聞きながら1人ずつ殺す。


アジト内の者達を全て殺した後、火を付け燃やし始める。

駆けつけた仲間に、幹部の姿に変化した僕は

「皆を集めろ。反撃する。」

と指示を出し、郊外の廃教会に集め同じように始末すると。

この国の関係者はほぼいなくなる。


この情報は、各国に配信され。何処にいても「悪意の種」の関係者は天罰が降ると噂になる。

すると命を惜しむ者達が兵隊に自首し出す。

それを聞いた他の者達も慌てて、自首して組織関係者のほぼ全員が捕まり、組織は壊滅する。


当然自首したからといって、罪が消えるはずもなく重い処罰を受けることになる。


その後獣人への不当な犯罪は形を潜め、大きな闇組織自体も自然と解体消滅始める。


しかし人間は罪な生き物。完全に無くなることはない。

「これからも時折、天罰を見せるか。」

そう呟きながら僕はオムニバスに戻る。



ーー  オムニバス王国の武闘大会



恒例になったオムニバスの武闘大会が開かれることになった。


例年に習い種族間の選抜を勝ち抜いた戦士が登録する。

今回は、僕の妻達は参加しない。

ただ優勝者は、アイと戦う権利を得ることはできる。


大会は以前より参加者が増えたことから5日間に伸びた。

たくさんの獣人に混じり、近隣の人族らも見学者が増えた。


今回は特別に外部参加者も3人ほどいる。

各国から推薦された豪の者たちだ。


参加者は200人を超え、予選を通過した者は50人。

5会場で準々決勝が行われ、10人が残った。

準決勝は獣人が9人に1人の人族が残った。


人族は、ゴールデ王国の剣豪といわれた男で名を。

ジゲン=シンサイ40歳

である。

剣術の技術が優れており、力任せの獣人と違い美しく戦う。


決勝に残ったのは5人。

獅子族、リザードマン、竜人族、熊人族と人族だ。

ここで獣人族4人の決勝が行われ、獣人族のトップが決まる今回は獅子族のライアンだ。


人族の相手は、人族バージョンの僕が会場に進み出る。

観客の反応は、二つに分かれる。

一つは、僕のことを知っているまたは聞いている者たちで、大いに歓声を上げて迎える。

もう一つは、僕を知らない獣人たちで、何者だと言う声と不満を口にする者たちである。


ジゲンとの試合が始まる。

ジゲンは初めから気合が入っている。

「初めてお会いする。其方サザンクロスのカムイ子爵殿であるな。」

と言うジゲンに

「よくお分かりで、存分に戦いましょう。」

と答えると

「もとより、そのつもりです。いざ。」

と気合と共に斬りかかる。


洗練された剣術は美しい舞のようだ。流れるような剣先が生き物のように蠢く。

それを一つずつ、丁寧に捌きながら僕は技術を盗み始める。

次第に押していたはずのジゲンが、冷や汗をかき出し動きに澱みが生じる。

「ここまでの腕とは。」

感嘆の声を上げるジゲンに

「ここまでですか?あなたの本気は。」

と言うと意を結したジゲンが奥義を見せる。


「無拍子」

と呟き絶対の斬撃を繰り出す。

僕の姿が真っ二つに裂けたように見えた次の瞬間。

ジゲンの後ろから剣を突きつける。

「参りました。」

剣を下げ負けを認めるジゲン。

観客はそれまでの戦いを息を呑んで見つめていた。声を出すことも忘れて。

試合が終わった瞬間、大きな歓声で会場が包まれる。

すると獣人族の優勝者ライアンが会場に立ち。

「俺と立ち合え人族。」

と言い放った。


僕は、ライアンをひと睨みしながら威圧を与える。

竜種さえ動けなくなる僕の威圧にライアンが崩れるように膝をつく。

「身の程もわからぬのかお前は。」

と言う僕の言葉に震えながらアイアンは

「いかに強かろうと、強者に挑むは獣人の本能。」

とやっとの思いで答える。

そこで

「僕に挑みたくば、僕の妻たちを倒してからにしなさい。」

と言い置くとその場を離れる。


ライアンとアイの戦いは、あっけなく決まった。

レベル差があり過ぎるのと剣術の技術が違い過ぎるための結果だ。

暫くはアイの天下のようだ。



ジゲンは暫く後にサザンクロスの僕の領地に訪れ。

「私を家臣にしてくだされ。」

と士官を望んだ。当然剣術の騎士として雇いました。

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種族を変えられる能力を使い自由に生きる。 モンド @mondo823071

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