第3話そして、走り出す。

 決闘の一週間後。


 アベルは、謹慎処分のまま、王城の一室に軟禁されている。流石に暇なので、ひとまず日課の筋トレと、友人に本を差し入れしてもらってよんでいる。


 本人は、素直にしたがっているが、その内心、どう逃げ出そうか、と考えていた。最悪、隣の国にでもいけば、何とかなるか、と。隣の国は、海に面しているし、大きな湖があるから、魚料理がうまいという評判だ。


 実は、アベルはうまいものに目がない。と、言うよりむしろ、うまくないと食べない。両親は、このことで結構困っていたらしい。


 アベルは、王国がどう処分するか迷っているのだろう。王国は、決闘で成立しているところがある。しかし、王子が決闘で、しかも三倍の戦力で負けたのだ。なるべくなら内容を誤魔化したいだろう。最悪、闇に消されるかもしれないとおもっている。。


 とはいえアベルも手を打っている。多くの知り合いに出せる分手紙をだしているのだ。親友とギルドの連中はリアクションしてくれるだろう。過信は禁物だが。とはいえ、今のところ暗殺などはない。


 ここで、ドアが開き、エストが入ってきた。


「何してるのよ!のほほんとして!」


 アベルは少し傷ついた。


「ちゃんと勝ったよ。何で怒るの?」


 エストは睨み付けた。


「下手したら死んでたからよ」


 アベルはヘラヘラ笑った。


「まさか」


「まさか、じゃなくて、ホントに危なかったの!」


「うん、でも、エストが来たってことは、何とかなってんでしよ。どうなったか教えてくれない?」


 はあ、とエストはため息をついた。


「ホントにのーてんきね。アベル。まあ、釈放よ。あとは歩きながら説明するわ」


 二人は外に出る。エストは歩きながら説明した。


「とりあえず、決闘の結果は適用されたわ。まず私とマリウスの婚約は解消。婚約者は変更になったわ。あと、マリウス、ライ、レフは、謹慎処分。イシュタルは王妃教育を受けはじめてるわ。まあ、基礎は出来てるから多分大丈夫問題は、魔甲アーマー三騎全損にしたこと。特に最新鋭騎のメリクルが中古の二式に破れたからね。それで、話がこじれたの。簡単に機能停止するなんてね」


 ああ、と、アベルはどや顔だ。


魔甲アーマーは、胸甲に最大の負荷がかかると、最大限防御力場を発生させて自壊するからね。設計上しかたないよ」


 エストは諦めがおてつぶやく。


「まあ、結局王妃様のおかげであんたはおとかめなしになったわ」


「じゃ、いいや。めでたしめでたし」


 のんきに言うわアベル。その後頭部をどつくエスト。


「痛いよ、エストさん」


「あたし、苦労したのよ。王とか王子の戯言はともかく、王妃様のお言葉には非常に困ったわ。それに、あんたの騎士爵

は剥奪。あんたの学校の成果がなくなったじゃない」


 アベルは立ち止まる。


「それは、ごめん。エストさん。迷惑かけた。悪かった」


「な、なによ、急に改まって」


「いや、もう会うこともないだろうし。身分もちがうから。謝る機会もないからね。言葉使いは、ま、多目にみてくれ。二人のときはこうだったろ」


「これからどうするつもりなのよ」


「ま、親父に手紙書くよ。それからギルドで仕事見つけて金稼いでから実家に戻って釈明するよ。そのあとは他国に行くかな。この国では肩身が狭そうだし」


「ふーん。じゃ、」


 と、エストはにやりと笑う。


「お仕事しない? 送迎の。ある人を私の実家まで送ってほしいの。あんたの実家も近くでしよ」


 アベルは、少し迷った。何かが引っ掛かる。しかし、直ぐに返事した。


「ああ、頼むよ。実は金に困っていたんだ。シェフィールドがあれば、直ぐに帰れたんだが、あの調子だろ。そういえば、あれ、どうなった? 何とか取り戻したいんだが」


「問題ないわ」


 やがて、城の魔甲アーマー置場につく。そこで、アベルは愛騎を見た。


「シェフィールド!? 修理してくれたのか」


「魔法回路はぶじだったからね。あとは手足だけだから」


「ありがとう!ちゃんと働いて金返すよ。ところで、背中のバックパックはなに」


 そこて、アベルは愛機の背に人を乗せるバックパックがついていることについて聞いた。なんとなく、嫌な予感がするのた。


「あ、ごめんなさい。あたしを実家まで送って。修理代は前払い。出来れば今すぐ」


「な、何で?」


「おーひ様に追われてるの。腹心にしたいらしくて。で王子を退けたあんたに頼むの」


「あのな、スッゴい厄介事みたいだけど」


「あんたがはじめたのよ。責任とりなさいよとりあえず逃げるわよ」


「おい、僕も男だ。もし、何か間違いがあったらどうする?」


「大丈夫、あんたが、これ以上の厄介事増やそうとするほど馬鹿じゃないことしってるから」


 ま、へたれとも言うけどね、と、エストは心のなかで呟いた。


 アベルはエストに急かされてシェフィールドを起動。城を出る。エストが持っている割り符のおかげで直ぐに出ることができた。


 街道に入ると、エストは後席でにやりと笑った。


「で、アベル、まず何食べにいくの」


「この近くだと、焼き鳥がうまいという、って、なにいってるんだ」


「どうせ、あんたのことだから、美味しいものの食べ歩きするんだろうと思ってね。お金出すから、食べに行こう」


「……はあ、わかったよ」


 アベルは、シェフィールドの速度を上げた。多分色々な厄介事に巻き込まれるな、というほとんど確信の予感を感じながら。そう、あのときと同じように……

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|魔道装甲《ルーンアーマー》シェフィールド。「時代は婚約解消よ」「そうなの?」 サウザント @tensenten

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