告白

ジュン

第1話

私は不安を感じていた。自分がまるでロボットのような感じがするのだ。私は統合失調症だけれど、別段その事に抵抗はない。確かに自己の病とストラグルしてきたし、いまだってそうだけれど、そこから様々な作品がクリエイトされてきた。ものを書くこともそうだし、デッサン教室に通ってヌードデッサンしたり、舞台に立たせてもらったり、はたまた歌の勉強をしたり。でも、私は、ひとたび表現から離れると、まるで、横倒しにされた冷蔵庫のように、無念な冷えきった位牌のような物になる。私は、自分が自己から引き離されて、人間的な饒舌でかつ寡黙な有り様を喪ってしまうのではないか、と不安なのだ。だから、私は、人間の諸器官の精一杯の活用を通して、自分が人間的なものを喪っていないことを確かめようとする。私にとって表現とは、確認の訴えなのだ。今日、こんなことがあった。駅の構内を歩いていたら、イベントかなにか知らないが、音楽の演奏会をやっていた。周りにオーディエンスが集まっている。このご時世、コロナのせいで、みんな場や時を共有する機会が絶たれている。ガバメントの緩和明言も影響して、私がたまたまいた駅にも賑わいが戻ってきた。演奏が終わって、オーディエンスが拍手を贈る。私はその瞬間、券売機で切符を買うところだったのだけれど、聞こえてきた拍手に、その拍手を贈ったオーディエンスもまた、コロナの時を経ても、人間的という有り様を決して喪ってはいなかったということを確認させられた。私は、この状況にひどく感動して、涙こそ流さなかったけれど、私の不安の氷河は、まるで泣くように融解していったのだった。私は、自分がたとえ分裂症でストラグルの長い歴史とまた、そこからの回復の歴史をも抱えているわけだけれど、これほどまでに、鮮烈にまた強烈に同時にユーモアをもってその歴史を受け入れられるようになったのは、予期せぬ偶然のフォーチュンというものと遭遇する事態が私に繰り返し、人間であることの確認を与えてくれるからだ。今日は駅でそのような事態に会ったのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

告白 ジュン @mizukubo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ