第2話「テンプレは、まぁ、いい奴だったよ」

逆さまになった氷山。

巨大な世界樹。

浮かぶ空島。

七色に光る森。

荒れ狂う青色の川。

これって正に!

 

「ウォォォォ!!いーせーかーいーだー!」

 

「ワシからしてみればただ帰って来ただけだったけど、ルーベルトから見たら確かに「異世界」っキャね」

 

因みにこの二人。普通に会話しているが上空二千メートル程から現在進行形で落下中である。当然そのままだと地面にケチャップが散ることになる。

 

「これどうやって着地するんだ?幼女よ」

 

「あ〜。ワシ、考えてなかったわ。っキャ!」

 

「ん。………ヤバくね?」

 

「………うん。詰んだっキャね」

 

ふーん。此処が俺の人生の終点かぁ……。

 

「ちょっとキツイわ。やり残したこと沢山あるんだけど。例えば自分の好きなアニメを見るとかゲームするとかさ。まぁ死って終わりであり、始まりでもあるからな。悪くないかもな(悟り)」

 

「あっ。パラシュート持ってたの忘れてたっキャ」

 

「最初から出せやこの野郎」

 

「ワシ、男じゃ無くて女の子なんじゃけど。っキャ」

 

「いちいち言わなくても見りゃわかるわ」

 

てかさ。パラシュート間に合わなくね?

地上まで残り百メートルくらいなんだけど。絶対に間に合わないよね?

 

「あっ(察し)死んだわ。コレ」

 

「やっと用意出来たっキャ。パラシュート展開っキャ!」

 

パラシュートは地上ギリギリで展開した。

手を繋いでいた俺たちはアンバランスに揺れ続けながら不時着した。

正確には俺が幼女に引っ張られる形で。

 

「マジでお前勿体ぶるなよ?生命の危機だよ?

少しでも遅れたら俺たちトマトよ?トマト。

わかるか?トマト?」

 

「ワシの名前はトマトじゃないっキャ!『キャロ』っキャ!」

 

「悪かったって。それでトマトよ。(キャロっキャ!)へいへい。………んでキャロに質問をいくつかしたいんだけど?」

 

俺がそう言うとキャロは胸を張って………。

 

………壁を突き出して話し始めた。

 

「なんか失礼な事考えていないっキャ?まぁいいや。もしかしなくともこの世界のことだと思うから説明していくっキャ!」

 

「おっ。察しが良いねぇ。んなら頼んだ」

 

キャロはまな板を突き出し、腕を組んで話し始めた。

 

「この世界は『ソフトワールド』と言ってとっても簡単で柔らかく、脆い世界だっキャ!」

 

「脆い?柔らかい?何が何だかサッパリだ」

 

「もっと詳しく説明するっキャね。この世界は、ルーベルトの世界。『ハードワールド』の対の世界っキャ!」

 

「なるほど。わからん」

 

「対と言っても何でもかんでも反対ってわけじゃないっキャ!むしろ1つのものが2つに分かれてしまったと言った方がわかりやすいっキャ!」

 

あー。大体わかったわ。つまり異世界って事ですね。わかります。(わかってない)。

異世界と分かったら早速…!俺は肘をキャロにグイグイと押しつけて。

 

「あ、あの〜。キャロ様?異世界から来たら。その〜……能力とか無いでしょうか?例えば自分しか使えないチートスキルとか」

 

「あー。ルーベルト。お前、もしかしなくとも異世界転生とかに憧れていたっキャ?もしかしなくともヲタクっキャ?」

 

「私、ルーベルト。異世界の能力。具体的には魔法などに憧れておりました。それで?キャロ様?私はなんらかの能力を頂けたらその………いえいえ!私はキャロ様の家来ですので。はい!」

 

と俺が手をモミモミしながらキャロ………。

 

『キャロ様』にねだるとキャロ様はいわゆるうわぁ顔をしながらこちらを見てきた。

 

「うわぁ……物の見事な手のひらドリルっキャ…。

因みルーベルト」

 

「はい!何で御座いましょうかキャロ様!」

 

「お前にやる能力なんかないっキャ!」

 

「舐めてんのかこのロリがぁ!!!」

 

俺は能力が貰えないと聞き、その場で地団駄を踏んだ。

 

俺が態度を一変するとキャロが。

 

「此処までくると清々しいレベルの手のひらドリルっキャ。普通に考えたらわかるでしょ?何もしてこなかった普通の人が都合よく最強になることなんて有り得ないって(辛辣)」

 

キャロは語尾をぶん投げて俺にマジレスしてきた。…うん。まぁ確かに都合が良過ぎるのもつまらない…か。でも、能力は何かしら欲しい。

 

「なぁ?キャロ?異世界転移とかのテンプレって知ってるか?大体は最強とはいかなくても何かしら貰ってからスタートするんだぜ?」

 

「アイツ(テンプレ)はまぁ、いい奴だったよ。というかそんなにスキルが欲しいなら自分で作ればいいっキャよ。冒険者になればスキルなんて自作できるっキャ」

 

キャロ曰く、冒険者ライセンスを受け取れば自分の思うように能力を作れるらしい。

 

「キャロ。俺、間違ってたよ。スキルってもらうモノじゃなくて自分で工夫して作るモノだったよな!」

 

「誤解が解けて何よりっキャ。さて、ワシたちが活動する拠点に向かうっキャよ!ルーベルト」

 

「おうよ!!」

 

さて、異世界が俺を待っている!(使命感)

その拠点とやらを目指そうか!

 

 

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