架空TRPGリプレイ：教授室からの呼び声

２ターン目 ロールプレイ

※これはTRPG『教授室からの呼び声』のリプレイ小説です。基本的には会話のみで進みますが、要所で説明が必要な箇所では「>」表記で地の文が入ります。

GM「……では、中野さんのターンになります」

＞ GMはにっこりと微笑んで、中野を促す。

中野「マップにある喫煙所に移動します。御簾ヶ谷大学にも少なくなったものの喫煙者がいるはずです」

GM「いいでしょう。中野さんは土門研究室のある研究棟C-2から出て、中庭を抜け、大学で唯一残されている喫煙スペースに向かいました。この喫煙スペースは屋根はあるものの吹き曝（さら）しになっており、夏は暑く、冬は寒いと喫煙者たちからは評判が悪く、”御簾ヶ谷 喫煙難民キャンプ”と言われています」

中野「……その説明、いります？」

GM「一応、場の詳細な説明もあった方が盛り上がるかと」

中野「まぁ、そうですね。では、その……御簾ヶ谷 喫煙難民キャンプにはどんな人が集まってますか？」

GM「現在、この場にいるのは……中野さんとは違う研究科の研究員が数名、今年定年退官を迎える予定の同じ研究科の老教授、それと大学の建物の保全を行っている施設課の職員が数名います。さて、誰に話かけますか？」

中野「そうですね……では老教授に日常会話を」

GM「中野さんの日常会話スキルはお世辞にも高いというレベルではありませんので、ここは自動的に失敗します」

老教授「おお、土門さんのところの――中野君、そうそう中野君だな。いやぁ、君も喫煙者だったのか。最近は喫煙者の肩身が狭くてね、話し相手ができてうれしいよ」

＞ 中野を見つけた老教授は喜んで途切れることなく次々を話題を振ってくる。しばらく老教授の話に付き合っていると、施設課の職員たちが土門研究室のある研究棟C-2について話し始めているようだ。

中野「"聞き耳"スキルを使います」

＞ GMは無言でダイスを指さす。

中野「……"失敗"か」

GM「あなたはどうにかして施設課職員たちの会話を聞こうと試みますが、老教授はぐいぐいと研究の話を聞きたいとやってくるため、会話を聞き取ることができませんでした。しかも、老教授の話はどうやらすぐには終わることはなさそうです……では、Cさんのターンです」

＞ GMはこの卓で唯一の女性であるCに順番が回ってきたことを告げる。

GM「あなたは土門研究室にこの春にやってきた助教の佐々（ささ）です。土門研究室は、ゲノム工学で著名な研究室であり、助教とはいえ、常勤職である今回の公募はかなりの競争率でした。佐々はそんな有名研究室への参加で期待も大きかったのですが、この大学に勤め始めて数ヶ月、いくつか奇妙な噂を聞き少し不安になっています――さて、佐々さん、何から始めますか？」

佐々（C）「GM、確認です。このゲームの勝利条件についてですが、最初に言っていたように6か月間生き残ること……で、良かったんですよね？」

GM「ええ、その通りです。ただし、それ以上のことについては現段階ではお答えできません」

佐々「では、私は『助教』のロールプレイに徹します」

GM「なるほど。問題ありませんよ。では、このターンは何をしますか？」

佐々「論文を書くために先行文献を調べます」

＞ 佐々は本人もプレイヤーキャラクターも美人であるが（佐藤の見た目・85に次いで82）、切れ長で少し冷たい印象を与える目でGMをじっと見ている。

GM「あなたは土門研究室の研究成果を含めた自分たちの――ここではゲノム工学ですが――研究分野の最新論文をまとめた解説論文、いわゆる『総説』を書くように教授に言われていました。そのために先行文献を調べています。しかし、どうも何か引っかかる気がしています……というわけで、"学術"スキルの判定をお願いします」

佐々「はぁ、トラップですか……成功」

GM「あなたは総説を書くために、この分野の先行文献を集めている過程で、いくつかの土門研究室の論文が、御簾ヶ谷大学図書館で契約していない雑誌であったため、電子版が読めないことに気づきました。さきほど説明したとおり、教授は長期出張中です。そのため、それぞれの論文の著者である大学院生やOB／OGたちに直接に頼むことにしました」

> GMが一息つくために、ペットボトルのお茶を飲む。佐々はそれを頬杖を突きながら待っている。

GM「……失礼。では続けましょう。

しかし、あなたは彼ら――つまりは論文を書いた本人たちの連絡先が研究室の共通パソコンのなかにないことに気づきます。通常この連絡網にはリバイス（査読者からの指摘事項を修正するための作業）における再実験などの対応のため、卒業生の連絡先も保管してあるはずでした。

さて、困ったあなたはどうしますか？」

つづく